医学界新聞

2012.05.28

Medical Library 書評・新刊案内


ベナー ナースを育てる

パトリシア ベナー,モリー サットフェン,ヴィクトリア レオナード,リサ デイ 著
早野 ZITO 真佐子 訳

《評 者》佐藤 愛(大分大病院看護部)

看護の学びの発見,再認識,そして追体験

 臨床看護師として3年目を終えようとしている今,本書を興味深く手にとった。本書はベナーらが10年の歳月をかけて行った看護教育研究をまとめたもので,アメリカの看護教育システム,教育内容,今必要とされる改革を,事例を通じてわかりやすく論じている。数多く紹介される語りの中で最も共感したのは,教育と並行しながら臨床で働く3人の教育者の指導法だ。

 第2部「重要性・非重要性の識別力を育成する」で,尿路敗血症の診断でICUに入院する80歳の患者への対応が紹介される。この患者は呼吸器合併症でクリティカルな状況にある。しかし学生はカルテの情報のみに基づいて尿路敗血症のケアを優先していた。指導教師は,患者の元へ足を運び実際の全身状態を観察しながらアセスメントする必要性を指摘。学生はやっと呼吸器合併症への対応が最優先だと気付く。これは臨床では当然のことだが,学生の段階でそれに気付くのは難しい。臨地実習時,私もカルテからの情報収集を優先していた。著者は,この教師の指導を通じて,患者の今の状態を把握して必要なケアを判断することの重要性を,そして,学生をそのように導くことの重要性を示した。そのような指導を経て,学生の成長する過程が見えてくる。ナラティブは,患者の日々変化する状態を評価する重要性を見事に伝えている。臨床で働きながら教鞭をとる指導者の言葉は,臨場感をもって学生に強く訴えかける。

 第3部「臨床的想像力を育てる統合的教育法」では,教室での学習と臨床とを関連付けて指導する過程が示される。指導者は学生に多くの臨床的質問を投げかける。私も学生時代,講義中に質問すると,いつも「どうしてだと思う?」とか「どうしてそう思ったの?」と逆に質問されたものだ。そのときはなぜ答えを教えてくれないのだろうと思っていた。しかし,本書の事例を読みながら,あのとき

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