医学界新聞

2012.05.14

ACP日本支部総会が開催される


 米国内科学会(American College of Physicians;ACP)日本支部総会が4月14日,小林祥泰支部長(島根大病院)のもと,京都大学百周年時計台記念館(京都市)にて開催された。ACP日本支部は,日米間の交流を促進し国際的な視野を広げる目的で,日本内科学会総合内科専門医を中心に8年前に発足。本年より同学会年次総会から独立しての開催に至り,来年度からは一般演題も募集するなど,学術集会としてもさらなる発展が期待されている。本紙では,総会当日のもようをお届けする。


あるセッションのもよう。会場からも発言しやすい工夫がなされている。
 ACPショートトークシリーズ(座長=東海大・白杉由香理氏)は,参加者に事前に"宿題"が示され,セッションのなかで答えが明かされるなど,実践的に臨床知識やスキルを学べるセッションだ。まず,徳田安春氏(筑波大水戸地域医療教育センター)が,「病歴でどこまで診断できるか?」をテーマに3症例を提示した。氏は,正確な診断に近づくために,病歴の5W1H(患者,主訴,発症場所,発症日時,受診理由,来院手段)を押さえるべきと指摘。病歴聴取のスキルは症例経験を重ねることで磨かれるとして,主訴の「OPQRST」(発症,誘因,質,放散,強さ,時間経過)などチェックリストの活用や,指導医による即時のフィードバックの重要性などにも触れた。

 続いて岸本暢将氏(聖路加国際病院)が,関節痛患者の身体所見から診断を導き出すテクニックを披露した。氏はまず(1)どの部位か,(2)炎症性か非炎症性か,(3)単関節か多関節か,(4)どう分布しているか,の4ステップによるアプローチを提示。(1)では,患者に疼痛部位を指差してもらい,関節自体の痛みか否か鑑別するなど要点を示した。(2)では疼痛に加え可動域制限,熱感,発赤,腫脹を診ること,(3)では過去の痛みの病歴や,外傷歴も必ず尋ねることなどポイントを列挙。(4)の分布をみることで,多関節炎の鑑別診断がある程度可能と示唆した。

今すぐ臨床に役立つ知識やスキルをレクチャー

 Web上の内科診療ガイドライン「ACP PIER」の活用法を解説したのは野口善令氏(名古屋第二赤十字病院)。「左側頭部が痛い」高齢男性を側頭動脈炎と診断するまでの過程において,病歴・身体所見・検査を通じて必要となる情報を,ACP PIERを参考に収集した事例を示した。氏はACP PIERの利点として,トピックの均一性と簡潔性,エビデンスの集約性と推奨度の記載,毎月トピックが追加されることなどを列挙。ACP会員なら無料で利用できるため「ぜひアクセスしてみてほしい」と結んだ。

 最後に登壇した福原俊一氏(京大)は,「症例報告から一歩前へ」と題し,"比較"の視点を取り入れた分析的な観察研究への挑戦を勧め,抄録の書き方をレクチャーした。氏は,論文にはPECO(対象,曝露,比較対照,結果)によるシンプルな構造化,明確かつ測定可能なアウトカム指標の定義が必須と強調。(1)シンプルで切実なストーリーがあること,(2)目的と方法が一致し,研究が構造化されていること,(3)方法が明確かつ科学的であり,測定と比較の質が保たれていること (4)結果と結論が一致していることが,評価のポイントと示した。

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