医学界新聞

2012.04.09

がん医療の次世代リーダーをめざして


パネルディスカッションのもよう
 「Academy of Cancer Experts(ACE)Career Development Seminar――がん医療の次世代リーダーを目指して」と題されたセミナーが,2月26日,慶大病院(東京都新宿区)にて開催された。本セミナーは「がん医療のエキスパート養成」をめざし,聖路加国際病院,慶大大学院医学研究科およびMDアンダーソンがんセンターの3施設が主催する「Academy of Cancer Experts」のプロジェクトの一環。当日は,世界のがん医療の第一線で活躍する臨床家や研究者の歩んできた道から学びを得ようと,北海道から九州まで,若手医師を中心に80人以上の参加があった。

 最初に登壇したOliver Bogler氏(MDアンダーソンがんセンター)は,脳神経外科の教授職と,同センターのGlobal Academic Programs(GAP)の統括を兼務。氏は“メンター”や良きライバルとの出会いが自身のキャリアを育てたと語り,人脈ネットワークや組織整備の大切さを強調。チャンスに対してオープンであること,予期しない困難に遭遇しても,それをチャンスに変えて挑戦することで,新たなキャリアが拓けていくと示唆した。

 続いて,American Society of Clinical Oncology(ASCO)理事や世界肺がん学会理事長等を歴任し,がん医療の分野で国際的な活躍を続けてきた西條長宏氏(近畿大)が登壇。氏は「臨床家でも基礎研究やトランスレーショナルリサーチの知識とセンスが必須」であり,同時に「臨床の知識,研究方法論を理解できる基礎研究者の養成も必要」と強調し,基礎と臨床の人事交流の活発化を図るべきと提言した。

 基礎研究者の立場からは,佐谷秀行氏(慶大先端医科学研究所)が発言。脳神経外科医からがんの基礎研究の道へ,日本の大学院から米国の研究機関へ,などいくつかの転機を経てきた氏は,必ずやってくるチャンスを生かせるよう実力を日々磨きつつ,ピンチもチャンスに変えていけるよう,周囲との信頼関係を構築していくことが,キャリアアップのポイントと話した。

 足利幸乃氏(日看協神戸研修センター)は,外科系看護師を経てカリフォルニア大サンフランシスコ校にてがん看護CNSコースを修了,米国での臨床経験を経て看護大学教員の職に就いた経歴を持つ。氏は「フォロワーとして多様な経験をすることで,リーダーに求められるものがわかる」と発言。「やりがいと幸せに満ちた人生を,自らが“リード”してつかんでほしい」とエールを送った。

 4人の基調講演の後,パネルディスカッション(座長=MDアンダーソンがんセンター・上野直人氏)が行われた。キャリアに大きな影響を与える“メンター”に関しては「分野ごとに複数持つ」「キャリアの段階ごとに新たなメンターを持つ」ことの重要性が示唆された。また参加者の「未成熟な臨床領域の存在意義をどう確立し,キャリアパスを発展させていくべきか」という悩みには「自分のキャリアを伸ばすことが,そのままその分野の発展につながる。同じ志を持った人たちと共にキャリアを拓いて」との助言がなされた。

 最後に,ACEの代表メンバーの一人でもある上野氏が「口に出して語ることでチャンスは増えるもの。自分の描くビジョンを周囲とシェアして,その実現に必要なミッションは何か,常に考えてほしい」と総括。セミナーは盛況のうちに閉幕した。

 ACEの活動については,Facebookをご参照ください。

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