「大規模災害と障害者支援」セミナー開催
2012.03.12
大規模災害発生時の障害者支援,リハビリテーションの在り方を考える
各演者の発表は,音声,手話,字幕にて同時通訳された。 |
◆情報,支援からの孤立が大きなストレスに
東日本大震災に関して発表者の多くが指摘したのは障害者の孤立だ。まず避難所での生活について,加藤俊和氏(日本盲人福祉委員会東日本大震災視覚障害者支援対策本部)は,情報の多くが貼り紙によって提供されたために視覚障害者が情報を得ることが困難であったと述べた。また浅野順一氏(宮城県ろうあ協会)によると,音に対して注意を払う習慣のない聴覚障害者は他の被災者から苦情を言われることがあり,半壊した自宅に帰宅せざるを得ず,孤立を深めた例もあったという。
日當万一氏(全国脊髄損傷者連合会岩手県支部)は,「車椅子に座ったまま数日間過ごした」「仕切りのないなかで自己導尿を余儀なくされた」など,脊髄損傷者の避難所での生活について報告した。さらに氏は,仮設住宅の実態についても言及。大多数の仮設住宅がバリアフリーに対応しておらず障害者の生活の妨げになっていること,玄関のスロープなどは後付けで設置されたものの転倒事故が発生していることなどを明らかにした。こうした状況は,家族にも大きな負担を強いているという。
一方で,東日本大震災では被災直後から各団体が支援を開始したのも事実だ。そうした支援が行き渡らなかった要因について加藤氏は,被害が広範囲にわたり行政自体が被災した状況下での実態把握の難しさ,障害者の地域内での孤立などの問題点を挙げ,非常時の個人情報開示の在り方など今後の検討課題を示した。
◆多職種によるリハチーム体制の構築も
樫本修氏(宮城県リハビリテーション支援センター)は,震災後に同センターが行った,車椅子,歩行器,エアマットなどの福祉用具の提供や,補装具に関する巡回相談,地域リハ活動について紹介した。氏は,長期にわたる避難所・仮設住宅での生活により,身体の痛みを訴える住民が増加していると指摘。災害直後に現地で救命医療を提供するDMATが全国で養成されていることを例に挙げ,災害発生時におけるリハの専門家チームの養成も不可欠とした。
適時適切な多職種チームによるリハ介入の重要性は,何成奇氏(中国四川大華西医院),Angela BM Tulaar氏(インドネシア医学リハビリテーション協会)による基調講演においても言及された。四川大地震では1万5000人を超える障害者が新たに発生したが,リハの専門家が不足していたことから,何氏らは受傷者の機能的制約を最小限に抑え,日常生活動作の質を向上させるための効果的なリハの在り方を検討。理学療法,作業療法,鍼治療などを併用した緊急リハ,社会復帰を促進するための長期フォローアップとして地域リハを組み合わせることで大きな改善が見られたという。またTulaar氏も,被災直後のリハ専門家チームの現地派遣による早期介入,短期・長期に分けたリハプログラム立案の重要性を説いた。
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