第12回日本クリニカルパス学会開催
2012.01.16
パスが築くチーム医療の未来
第12回日本クリニカルパス学会開催
第12回日本クリニカルパス学会が12月9-10日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて開催された。福井次矢会長(聖路加国際病院)のもと,「これからのチーム医療」をテーマとして開催された今学会には,多職種の医療者が集まり,クリニカルパス(以下,パス)を通じて医療の質を向上させるための方法が模索された。本紙では会長講演と,多職種がいかにパスにかかわっていくべきかを議論したシンポジウムを紹介する。
福井次矢会長 |
氏は,心不全患者の再入院・死亡率の低下,2型糖尿病患者の血糖コントロールの改善,乳がん患者の治療継続や生存率の向上など,チームによる患者へのかかわりの有効性が科学的に実証されていることを紹介し,チーム医療の重要性を指摘。質の高いチーム医療を提供するためには職種間の相互理解や情報共有が不可欠だが,パスの導入は,どのような医療行為がいつ,誰によって行われるのかを明確化したことによって,その実現に大きく貢献したと評価した。
また,今後さらに安全で効果的なチーム医療を提供していくための要件として,(1)医療を取り巻く社会環境に鑑みた専門職の種類や役割の見直し,(2)医療職の生涯教育の見直し,(3)病院内の横断的テーマを専門とする職種の養成,の3つを提示。特に(2)の生涯教育として,コミュニケーションやチームワーク,リーダーシップなどの集団行動に求められる能力を,医療に携わるすべての職種が身につける必要性があると強調した。最後に「チーム医療の中でパスがますます発展することを期待している」と氏は語り,講演を終えた。
多職種院内連携をどのように推進するか
シンポジウム「チーム医療と多職種院内連携――どのようにパスに関わればよいか」(オーガナイザー/座長:総合高津中央病院・宮崎美子氏)では,栄養サポートチーム(以下,NST)やがん緩和領域などに携わる多職種の院内パスへのかかわり方,チーム医療の中で果たしている役割が紹介され,その有効性について議論された。
トヨタ記念病院の伴由紀子氏は,栄養スクリーニングを組み込んだパスについて報告した。同院では,2002年12月からNSTが稼動しており,当初から入院時に主治医が患者の栄養スクリーニングを実施していた。しかし,2004年に実施率を調査したところ,結果は約66%。入院時の煩雑な業務の中での実施忘れが目立った。また,NST回診の依頼が遅く,十分な栄養摂取量が得られていない状態が数日続いていたり,依頼も医師ではなく,看護師によるものが多いといった状況が見られたという。
同院では2004年に紙パスから電子パスへ移行,2006年からはほぼすべての診療科でパスが使用されるようになり,入院患者のパス実施率は50%を超えた。そこで,パス稼動の第1日目のタスクに「NST評価」を加え,多職種で使用し,評価を行う栄養スクリーニングテンプレートを組み入れ,入院時,手術および治療開始時に必ず栄養評価を実施することにした。その結果,栄養状態を確認する必要性が医師たちに認識され,早期のNST介入依頼が増加。2008年以降,医師による栄養スクリーニングの実施率は95%を超えている。このことから,氏は,パスが普及している施設においては,パスを利活用することがNST活動の推進に有用という見解を述べた。
東女医大病院薬剤部の伊東俊雅氏は,同院で使用されているがんの化学療法パスを紹介し,薬剤師がいかにパスへかかわっていくべきかについて言及した。化学療法パスの構築にかかわる上で薬剤師に求められる役割は,薬剤の副作用の種類や頻度,見分けなければならないリスク...
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