医学界新聞

2011.12.19

社会との対話を通し,医療を問い直す

第6回医療の質・安全学会開催


 第6回医療の質・安全学会が11月19-20日,永井良三会長(東大大学院)のもと,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された。開催テーマは「医療安全学の新たな展開――科学と社会の対話をめざして」。適切な医療実践には,先進性や学術性だけでなく,社会との対話が不可欠との理念のもと,多職種が参加し,活発な議論が交わされた。


"対話"に役立つ経験,知恵,工夫を共有

永井良三会長
 医療の質,そして安全を高めるためには,患者・家族と医療者の"対話"が不可欠である。シンポジウム「"対話"からはじまる医療――インフォームド・コンセントや事故後対応の話ではありません」(座長=武蔵野赤十字病院・矢野真氏)では,医療現場における"対話"を促進するためには何が必要なのかが議論された。

 横浜市健康福祉局の浜田進一氏は,同市が運営する医療安全支援センターの取り組みについて紹介した。同センターでは,医療者に対して医療安全研修会や医療安全メールマガジンを提供するほか,市民に対しても出前講座や啓発リーフレットの配布を行うなど,医療者と患者とのミスコミュニケーションの防止に努めている。さらに氏は医療相談窓口に寄せられた相談事例を提示。患者・家族が何を伝えたいのかきちんと傾聴すること,説明の際には相手の理解度を確認すること,可能な範囲でメモを活用することなど,具体的なトラブル回避の方法を紹介するとともに,さらなる対話促進の必要性を説いた。

 糖尿病看護認定看護師の豊島麻美氏(武蔵野赤十字病院)は,医師,看護師が協同して患者の自己決定を支援した事例について報告した。手術目的で入院したものの,糖尿病の発症により手術延期となったAさん。豊島氏は担当医より,高齢であり独居のAさんに適したインスリン療法について相談を受けたことから,かかわりを開始した。豊島氏は,Aさんは糖尿病の発症をどうとらえているのか,またAさんや家族は糖尿病に関する知識をどの程度有しているのかなど,Aさんを看護する上で把握すべき情報に着目。Aさんの語りを聞くことを促し,「家に帰りたい」という意思決定を引き出したことで,Aさんの在宅支援を整える足並みがそろったと述べた。氏はこの経験を踏まえ,ナラティブ・アプローチが医療の質向上に資すると結論付けた。

 長谷川剛氏(自治医大)は,自身が医療監修を務めたテレビドラマを通し,"臨床現場における勇気"について考察した。優秀だが患者に笑顔で接することができず,「君は看護師失格」と医師に言われ悩むM看護師は,ある日患者から手術への不安を必死に訴えられ,「心配しないでください。絶対に大丈夫!」と励ます。手術が終わり,M看護師は患者の家族から「(患者は)看護師さんのおかげですごく安心した」と感謝される。長谷川氏はこのシーンについて,看護師が「大丈夫...

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