医学界新聞

2011.12.05

COIマネージメントの在り方とは


シンポジウムのもよう

 日本医学会が主催するシンポジウム「産学連携における医学研究とCOIマネージメントの在り方」(司会=徳島大名誉教授・曽根三郎氏,レックスウェル法律特許事務所・平井昭光氏)が11月16日,日本医師会館(東京都文京区)にて開催された。日本医学会は,本年2月に発表した「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」にて,COI(利益相反)マネージメントの指針を表明。企業等からの外部資金に基づく産学連携研究では,不信や疑惑を招かないために適切なCOIマネージメントがますます重要となっている。本シンポジウムでは,産学連携の推進を目的にCOIマネージメント現状を5人の演者が報告した。

 最初に登壇したパトリック・バロン氏(東医大)は,欧米やアジアの臨床医に対し実施したCOIに関するアンケート(回答者:12か国18人)の結果を紹介した。得られた回答からは,世界各国におけるCOIへの取り組みは統一性がなく,医療者側の知識も不十分であることが伺えたという。氏は,COIのポリシーを根付かせるために事例をWeb上で公開し,社会と医療者に受け入れられる単一の国際規約を定め,それを十分に教育する必要があると提案した。

 続いて玉置俊晃氏(徳島大)が,2010年に国公私立の79大学医学部を対象に実施したCOIマネージメントの調査結果を報告した。各大学での臨床研究のCOI指針策定率は,08年調査時の33%から75%に改善したものの,専任の事務職員は約2割しかおらず,COIマネージメントを学ぶ機会も不足していると問題点を提示。今後の課題として,教育セミナーなどを通じたCOIマネージメントに関する情報の周知やCOI違反者への措置など,運用面の具体化を挙げた。

 高後裕氏(旭川医大)は,日本医学会の109分科会へのアンケートを基に,各学会におけるCOIマネージメントの現状を語った。COIマネージメントを開始する学会が増え,独立した立場のCOI委員会を設置した学会や学会発表や雑誌投稿時におけるCOI開示法を規定した学会が昨年度と比べ今年度は増加していることから,COIマネージメントは学会に着実に浸透してきているとした。

 日本製薬工業協会が本年策定した,「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」については,同協会の花輪正明氏が解説した。各製薬会社は,同ガイドラインに基づき資金提供等について公開を行う。主な公開対象は,(1)研究開発費,(2)大学や学会への寄附金などの学術研究助成費,(3)原稿執筆料等,(4)新薬説明会などの情報提供関連費であり,2012年度分(公開は2013年度)からの公表を予定しているという。

 浅井文和氏(朝日新聞社)は,メディアの立場から産学連携における国民の理解を考察した。これまでのCOIに関する報道は,厚労省研究班メンバーへの寄附金問題などの「問題告発型」とガイドライン策定時の「制度報告型」に偏っていたため,産学連携の医療への貢献が国民に知られていないと現状を指摘。COIマネージメントは,産学連携の実態を知ってもらう上で必要なステップとの見解を示した。

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