看護師の継続教育・学習におけるe-learningの活用(バートン裕美,瀬戸山陽子)
寄稿
2011.11.21
【投稿】
看護師の継続教育・学習における
e-learningの活用
バートン裕美(NurseEDU・CEO)
瀬戸山陽子(聖路加看護大学大学院博士後期課程)
患者が勉強する時代
1990年以降の情報化の結果,患者の情報利用は盛んになっている。情報化社会と言われて久しいが,それを象徴するインターネットは,日本において利用者が9408万人,人口普及率にして78.0%に上る。日本ではインターネットでの健康医療情報利用に関する調査は行われていないが,検索結果の多さから,身近な健康医療情報源として利用されていることがうかがえる。
最近では,ブログやオンラインコミュニティで当事者由来(consumer oriented)の情報が容易に閲覧できるようになり,患者やその家族はインターネット上のQ&Aサイトやオンラインコミュニティを使って,お互いに情報を共有しながらサポートネットワークを構築している。現代社会では,患者にとってかつてないほどの学びの場が,インターネット上に出来上がっているのだ。
なぜ継続教育・学習が必要なのだろうか?
このように患者が自らの病気について非常に多くの情報を得ている昨今,患者の生活を包括的に支援する看護職としては,これまで以上に学習機会の充実が求められる。もちろん情報の流れが早く,医学の進歩も著しいなかで,看護職が臨床現場で必要な知識を日々アップデートすることは容易ではない。だが,患者が自分の疾患について多くを学べる時代では,看護職がそれに合わせて知識を身につけていかなければ,専門職としての支援が行いにくい。
教育を促進し,よく学んでいるスタッフがいる現場は,治療の結果がよく成果が高いのではないだろうか。看護の場で言えば,アセスメント力が高い看護師がそろっている病棟は状態悪化を早期に発見することが可能で,それに対して治療を早期に始めることができ,重症化を避け,早期回復,そして退院となる。しかし,看護師不足でさらに教育が不十分であれば,経験の浅いスタッフのアセスメントだけでは発見できない,予期できないことも有り得る。発見が遅れ重症化し,長期入院など治療費が高額化し,避けられたはずの合併症が併発し,スタッフの負担の増加,さらなる人手不足……,と悪循環に陥る。
看護職に適した学習方法とは
看護職の学習では,何を学ぶかはもちろん重要であるが,同時に効率的な学習方法を普及させることが急務であろう。その一例として,e-learning方式を用いた利便性や自由度が高い学習方法が挙げられる。不規則勤務で拘束時間が長い看護師にとって,休日の確保はその翌日に効率的に働くため必要である。現在,休日返上で勉強会を行う施設が多くあるが,これは効率的な業務の妨げになりかねない。もちろん,休日を学習の機会に充てることも個人の選択肢としてはあるが,各看護師が主体的・自律的に選択でき,裁量度の高いシステムが求められる。
日本でのe-learningの普及が,他国に遅れをとっている原因として,既存の教育の概念が大きな壁となっているのではないかと思われる。師(教師)に面と向かい教えを受ける,すなわち教室に出向き机に座り講義を聴く,これが多くの人が好む学習方法だ。しかし業務改善などの進展に遅れをとっている今,この既存の方法では,現場の看護師たちにとっては完全に不利と言えよう。継続学習においては,看護師の勤務体制だけで既に一般社会よりマイナスのスタートである。例えば,社会人向けの一般的な資格や語学の学校の多くは,夕方に定期的に開催されている。勤務体制が不規則な看護職では,定期的な学習に参加するためには,まず勤務を調整するところからその継続への“葛藤”が始まる。多くは,業務による疲労と時間調整への葛藤で,学習意欲をそがれてしまう。個人で学習を行う際には,不規則勤務のなかの限られた時間を最大限に利用しなければならないのだ。
教室...
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