医学界新聞

2011.10.17

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


大腸肛門病ハンドブック

辻仲 康伸 監修

《評 者》小西 文雄(自治医大さいたま医療センター教授/一般・消化器外科)

大腸肛門病の診療に携わる医師にとって有用な最新のmonograph

 このたび,医学書院から辻仲康伸氏の監修による『大腸肛門病ハンドブック』が出版された。本来,大腸疾患と肛門疾患の診断と治療は,歴史的に見ても一体となった一つの領域として取り組まれてきており,現在でもその必要性があると思われる。わが国においては,日本大腸肛門病学会がその要となる組織であり,大腸疾患と肛門疾患を包括してその臨床と研究に関する発展における重要な学会としての役割を果たしている。しかし,現在わが国では,大腸疾患と肛門疾患は専門とする医師が異なり,二つの独立した領域として診療体制が取られている傾向がある。

 一方,欧米においては,現在に至るまで,大腸外科医は肛門疾患の治療も同時に行っていることが多く,癌の専門病院を除いては,両者を含めた幅の広い診療と研究が行われている。このような欧米における体制は,以前私が留学した英国のSt. Mark's Hospitalにおいても現在に至るまで,継続して行われており,同病院の外科医たちは大腸肛門病において幅の広い活動を展開している。

 監修者の辻仲康伸氏が本書の序論で述べておられるように,この領域における欧米の著名な専門書は,大腸疾患と肛門疾患の両者を含む内容となっている。辻仲氏は,横浜市立大学外科において大腸外科の研さんを積まれた後,主として肛門疾患を中心に診療を発展してこられた。今回出版された『大腸肛門病ハンドブック』においては,肛門疾患に重点が置かれているが,一方,大腸内視鏡の挿入法や内視鏡診断の最新知見,さらに,炎症性腸疾患の診断と治療や大腸癌の基礎と臨床に至るまで,幅広く大腸疾患についての重要な内容にまで及んで書かれており,本書を監修された辻仲氏の見識の高さがよく理解できる。

 肛門疾患に関する各章においては,最新の治療について素晴らしい図と写真を駆使して詳細にかつわかりやすく解説されており,日常診療において経験することが多い肛門疾患のup to dateの治療方法を理解する上で大変有用である。内容は具体的で詳細に記述されており,かつ,各章の統一性がとれている。特定の治療法に偏ることなく,現在一般的に施行されている複数の治療法について紹介されており,肛門疾患の適切な治療法の選択を考える上で大変役に立つ内容である。

 三大肛門疾患の中でも,特に痔核と痔瘻の治療に関しては,治療法の選択基準などが具体的に記述されており,実際の診療に当たる外科医にとって大変参考になる。肛門超音波検査や大腸肛門の機能検査,さらに過敏性腸症候群や便失禁治療法についての記述もあり,わが国においても特に最近問題となってきているこれら大腸肛門の機能性疾患を理解し,適切な治療法を選択する上で有用である。

 本書の執筆は,これまで精力的に大腸肛門疾患の治療に携わってこられた辻仲康伸氏および辻仲病院に勤務されている大腸肛門疾患治療の豊かな経験を有する医師が中心となってなされており,内容的に統一性がよく保たれている。本書は二つの辻仲病院における大腸肛門病診療の努力の結晶であり,このような経験豊かな執筆者らによって書かれた本書が,大腸肛門病の診療に携わる医師にとって有用な最新のmonographとなることは間違いないであろう。

B5・頁392 定価12,600円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01342-0


イレウスチューブ
基本と操作テクニック 第2版

白日 高歩 監修
上泉 洋 著

《評 者》山下 裕一(福岡大教授・消化器外科学)

若手医師に必須の,イレウスの診断と保存的治療のすべてを学べるバイブル

 今般,好評の『イレウスチューブ――基本と操作テクニック』が大改訂された。本書は,イレウスチューブの挿入方法から管理,抜去のタイミング,合併症まで実践的知識が満載されている"イレウスチューブ治療の実践書"である。臨床の現場では,多くの若手医師は単純性(閉塞性)イレウスのイレウスチューブによる治療方法を,先輩医師の治療をつぶさに見ることでそのコツを体得している。系統立ったイレウスチューブ治療法を学べる教科書が必要であり,本書はまさにその代表格である。本書にはイレウスチューブを使用した単純性イレウスの治療法がすべて網羅され,日常臨床でのバイブルとなっている。

 外科医が診る急性腹症の3大疾患は,急性虫垂炎,急性胆嚢炎そしてイレウスである。プライマリ・ケアを担当する外科医,それに救急医や総合診療医,そしてそれを学ぶ若手医師においてイレウスの診断と治療は必須である。イレウスには機械的イレウスと機能的イレウスがあり,前者は単純性(閉塞性)イレウスと複雑性(絞扼性)イレウスに分類される。本書は,単純性イレウスの初期対応や保存的治療としての胃-腸管内の減圧を目的としたイレウスチューブによる治療を中心に各種チューブの特徴,各種のデバイスを用いた挿入法と治療法,合併症,併用療法などま...

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