医学界新聞

2011.10.10

第3回日本病院総合診療医学会開催


 第3回日本病院総合診療医学会が9月9-10日,東邦大医療センター大森病院(東京都大田区)にて杉本元信会長(東邦大)のもと開催された。本紙では,東日本大震災における医療支援をテーマに,支援側・被災地側から計10人が登壇した緊急シンポジウム「災害医療において総合診療医は何ができるか?」(座長=都立墨東病院・中村ふくみ氏,東邦大医療センター大森病院・吉原克則氏)のもようをお届けする。

◆災害時こそ,総合診療の強みを発揮した支援を

杉本元信会長
 初めに基調講演を行ったのは内藤俊夫氏(順天堂医院)。氏は,気仙沼市の避難所での活動経験から,(1)医療ニーズの評価,(2)避難所の当直,(3)慢性疾患の管理,(4)震災関連疾病の予防,の4点が求められていると指摘。すべてが総合診療医の得意分野であることを強調した。

 長浜誉佳氏(国立国際医療研究センター病院)は仙台市宮城野区で災害派遣医療チーム(DMAT)として活動したが,複数の支援団体の交通整理的な業務が大半を占めたという。氏は,情報収集をしながら医療ができる環境作りや,長期支援体制の整備を課題として指摘。病院全体の機能を把握し行動できる総合診療医の必要性を訴えた。

 横林賢一氏(広島大病院)は,プライマリ・ケア連合学会の災害医療支援チーム(PCAT)にて石巻市で活動した。氏は,医療依存度の高い高齢者らを集めた"福祉的避難所"化をめざし,簡易ベッドを導入,寝たきり状態を防いだことなどを紹介。非選択的な診療能力やチーム医療への適応力など総合診療医の強みが災害時に際立つと話し「被災者が求めることを実践する」「感謝の気持ちを言葉にする」大切さを述べた。

 福田洋氏(順大)は,遠隔地からの医療援助の一方策として,医療職による無料の被災者向けメール相談「Rescue311」の概要を解説。本サービスには9月までに114件の相談が寄せられ,最近では精神的苦悩や放射能不安,社会的援助の要請といった内容が増えているという。相談者へのファーストタッチが平均23分という迅速な対応を実現しており,「長期化する復興支援の一助になれば」と抱負を語った。

 被災地からは4人の医師が登壇。東北大病院の金村政輝氏は「最前線の病院を疲弊させない」ことを最優先し,医療スタッフ派遣・不足物資の供給・被災地からの患者受け入れと移送,の3点から被災地を支援したことを報告。医局と関連病院の人的ネットワークが機能し,被災地の情報拠点としての役割を果たせたという。氏は「すべての医師は総合医として活動してほしい」という災害発生直後の里見進院長の言葉を紹介,総合診療医の守備範囲の広さを生かした復興支援に期待を寄せた。

 そのほか,奈良正之氏(東北大病院)は総合診療部での震災前後の受診動向を比較検討。通院先を失い遠方から通う慢性疾患患者が増えていることなどを報告した。佐藤正憲氏(福島県富岡町医師会)は大規模避難所「ビッグパレットふくしま」での救護所運営の経験から,避難民の居所の把握と管理,周辺医療機関との連携が重要と話した。石木幹人氏(岩手県立高田病院)は,病棟4階まで津波が押し寄せた震災時の状況を写真を交えて振り返り,支援者が安心して活動できる環境作り,病院職員の健康管理などを教訓として挙げた。

 その後の総合討論では,複数の支援チームをまとめるリーダーシップを持ったコーディネーターの必要性や,長期支援の視点の重要性が改めて確認された。