日本在宅看護学会設立総会開催
2011.09.26
「日本在宅看護学会」が設立される
川村佐和子理事長 |
◆中長期的視点に立って,在宅看護の在り方が模索される
総会後に行われた基調講演「2025年の在宅看護の姿をデザインしよう!」では川村氏が登壇。訪問看護への社会的需要に対し,提供量の充足および質の向上を図ることが喫緊の課題であるとし,「在宅看護学」を確立していく必要性を訴えた。「街(社会)に住む人々全員と手を組み,健康な生活の貴重な担い手として街に根を張っている姿」を2025年の在宅看護の理想の姿として掲げ,講演を締めくくった。
基調講演を受けて行われたシンポジウム「これからの訪問看護サービスの創出――社会共通資本としての訪問看護の行方」(座長=慶大・小池智子氏,訪問看護ステーションけせら・阿部智子氏)では,在宅看護の中長期的な課題について議論された。
最初に登壇した本田彰子氏(東京医歯大大学院)は,在宅看護を「学問」として体系化し,(1)実践の知を伝えること,(2)複数の実践の知を融合させること,(3)小さい実践の知を大きくすること,の重要性を強調。その上で,本学会を「探究心を持つ人がやりたいことを花開かせていく学会にしていきたい」と語った。
「介護職員等によるたんの吸引等の実施」の法制化をめぐり,在宅医療の現場での多職種協働の在り方について言及したのは原口道子氏(都医学研)。2011年6月の法改正により,2012年4月1日より一定の条件下で介護職員等によるたん吸引や経管栄養の実施が可能となる。氏は,安全性の確保のために,医師・看護師・介護職員によるチーム連携への積極的参画や,介護職員等へのたん吸引等の研修指導が,看護師に求められる新たな役割になると提案した。
訪問看護事業に関して,「経営」の視点から発言したのは田中滋氏(慶大大学院)だ。氏はまず,「経営」は理念やリスクを勘案し,複数の正解群から一つの行動を選択する行為,「管理」は与えられた責務を遂行する行為と定義。法人事業所レベルの経営を訪問看護事業に求めることは,複数の解がある資金繰りや経営戦略までをも考えさせることになり,本来の目的である看護ケアの提供およびその業務管理に影響を与えかねないという。そのことから,「訪問看護は必要だが,その事業主体は訪問看護事業所でなくてもよいのではないか」との見解を述べた。
2030年,総人口の約3分の1を高齢者が占める超高齢社会が日本へ到来する。秋山弘子氏(東大)は,住み慣れた地域で,日常の生活を送れるように高齢者を支えることが重要と指摘。看護師には,生活を支援する医療の実践に加え,今後は生活環境を整備する「まちづくり」への貢献も求められると訴えた。
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