医学界新聞

2011.09.26

第21回日本看護学教育学会開催


 第21回日本看護学教育学会が8月30-31日,河津芳子学術集会長(埼玉県立大)のもと,大宮ソニックシティ(さいたま市)にて開催された。「看護の専門職性を高める看護学教育」をメインテーマとした今回は,社会の要請に応える看護師の役割を踏まえ,生涯にわたりいかに専門性を追求していくか,多様なテーマが設けられた。

◆新人看護職員研修のさらなる充実をめざして

シンポジウムのもよう
 医療の高度化,社会ニーズの変化,医療安全の強化,看護の役割拡大などにより,臨床現場ではより質の高い知識・技術が求められる一方で,臨地実習で学生が看護技術を経験する機会は減少している。自らの看護実践能力に不安を抱える新人看護職員を支え早期離職を防ぐべく,2010年には新人看護職員研修が努力義務化されるなど,さまざまな模索が続けられている。シンポジウム「新人看護職員臨床研修制度を経験して」(座長=帝京平成大・網野寛子氏,埼玉県立大・大塚眞理子氏)では,基礎教育と臨床が今後どのように連動していくべきかが議論された。

 洪愛子氏(日看協)は,新人看護職員研修の努力義務化によって新たに立ち上げられた補助金事業について,2010年度申請額は約12億円であり,予算額16.8億円の約70%にとどまったと報告。補助金を積極的に活用し,教育研修体制のさらなる充実を図ることを呼びかけた。

 厚労省「新人看護職員研修に関する検討会」(座長=北海道医療大・石垣靖子氏)の委員を務めた北村聖氏(東大)は,自らが創設にかかわった新医師臨床研修制度について,今年実施した評価結果を解説。教育制度の評価の難しさを指摘しながらも,基本理念である研修医のプライマリ・ケア能力の向上や人格の涵養については,一定の効果が出ていると述べた。

 竹内千恵子氏(東邦大)は,基礎教育と臨床で育てたい看護師像を共有し,臨地実習前あるいは卒前に獲得しておくべき看護実践能力についてすり合わせを行う重要性を指摘。同大では実習施設との相互理解・連携を深めるべく,学内演習・実習前技術演習・卒前技術演習への臨床看護師の参加,臨床看護師の教育現場での研修,教員の臨床現場での研修などを推進しているという。

 都立病院では,07年に3か月間の新人看護師臨床研修を開始。前任の都立多摩総合医療センターで研修に携わった藤田枝美子氏(都立小児総合医療センター)は,1か月間の基礎研修,個別面接による配属決定,6月後半からの夜勤研修,臨床心理士による精神面のサポート,ポートフォリオによる目標管理などにより,新人看護師の定着と育成に一定の成果が得られたと評価。今後克服すべき課題として,中堅看護師が疲弊していること,急性期病院での勤務に適さない学生の入職が早期離職につながっていること,途中退職する新人看護師の支援が行えていないことなどを挙げた。

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