医学界新聞

2011.07.25

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


《看護ワンテーマBOOK》
退院支援実践ナビ

宇都宮 宏子 編著

《評 者》宗川 千恵子(NTT東日本関東病院 連携統括部看護長)

実践的でコンパクトな退院支援解説書

退院支援は病院全体で取り組むべき課題
 患者や家族は,病気を抱えながら,どう生きたいか,どう死にたいか,どう介護したいかを考え,共に人として家族として,成熟していく。退院支援は看護師という専門職の立場からその過程をサポートする,奥の深い看護である。

 最近では,病院に退院支援部署を設置し専属の看護師やソーシャルワーカーを配置することで診療報酬にも反映されるようになったため,ますます注目されてきており,退院支援に関連した書籍や雑誌特集も多く見受けられるようになってきた。しかし,この『退院支援実践ナビ』ほど,実践的でかつコンパクトにまとまった本を手にしたのは初めてであった。

 なぜ今,退院支援が必要になってきているのか,その社会背景からわかりやすく解説してあり,その理由や根拠が理解できるとともに,患者が生活の場に戻るときに私たち看護師が具体的に何をしたらよいのか,プロセスに沿ってわかりやすく説明してある。そのため,読み進めていくだけで自然に頭の整理もでき,自らのアクションプランも立てやすい構成になっている。

 長年,退院支援の現場で働いてきた私にとって,退院支援は退院支援部署だけが頑張ってもうまくいかないものであり,外来看護師,病棟看護師ひいては病院全体で積極的にかかわることが重要であることを痛感している。本書では,そのことが見事なまでにわかりやすく,納得いくように書かれてある。

退院支援に必要な情報をコンパクトに網羅
 退院困難事例のスクリーニングにおいては,その意義や運用上の注意,患者への聞き方まで懇切丁寧に書かれてあり,これから退院支援部署を設置しようとしている病院管理者,もしくは退院支援の経験が浅い看護師にとっても「退院支援の実践書」として大いに活用できる本であると感じた。

 頻度の高い在宅医療管理については病院での看護から生活の場に戻る在宅看護への具体的なアレンジの方法やポイント,観察項目,在宅医や訪問看護師との連携や引継ぎ事項まで丁寧に教えてくれている。また,写真やスライド,事例などがふんだんに盛り込まれているため非常にわかりやすく実用的に書かれている。

 さらに在宅療養を行う上で,利用できる介護保険制度やその他の社会保障制度についての知識や情報を得ることができるため,現場での退院支援実践において,非常に役に立つ一冊である。

 急性期病院で行われている安全かつ治療重視の看護には,退院阻害因子が数多くある。そして,急性期病...

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