医学界新聞

2011.04.18

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


CRCのための臨床試験スキルアップノート

中野 重行,中原 綾子 編
石橋 寿子,榎本 有希子,笠井 宏委 編集協力

《評 者》井部 俊子(聖路加看護大学長)

CRCの誕生から現在に至る活動の集大成の書

 本書は,国際医療福祉大学大学院の公開講座として2007年に開講された「CRCのためのコース」の講師陣により執筆されたものであり,2010年現在,CRCが実施している臨床試験の水準を示すものである。本書を読みながら,評者は「新GCP普及定着総合研究最終報告書」(1997年度厚生科学研究,主任研究者=中野重行氏)を思い起こした。

 厚生省(当時)は,新しいGCP(Good Clinical Practice)に基づく治験が円滑に実施されていることを支援する目的で,GCP適正運用モデル事業とともに,1997年度厚生科学研究として「新GCP普及定着総合研究班」を設置した。この研究班は6つの作業班と統括班から構成され,評者は「治験支援スタッフ養成策検討作業班」の班長を務めた。報告書では,「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(省令GCP)における「治験協力者」を専任スタッフとして「治験コーディネーター」(Clinical Research Coordinator ; CRC)とすることを提案し,その役割,配置,費用および人材養成などについて報告している。報告では「CRCとは,医薬品の臨床試験実施過程において,とりわけ被験者と治験との調整を行い,治験の倫理性,科学性を保証するための活動を行う」とし,64項目の業務を,(1)事務管理,(2)患者ケア,(3)医療スタッフへの説明,(4)患者データの収集と管理に大別している。

 その後,10年余りが経過し,多くの優れたCRCの活躍に伴って「治験」から「臨床試験」へと大きく飛躍した。こうした活動の集大成が本書である。CRCをはじめとした創薬育薬医療スタッフを対象として,チーム内の連携やトラブルへの対処,より良いインフォームドコンセントの実施,被験者保護への貢献,治験審査委員会(IRB)の在り方,資料の作り方,などCRC実践家としての経験知がふんだんに収載されベストプラクティスを促している。

 評者が作業班長として記述した「新GCPにもとづく治験の実施は,一方で,わが国の医療におけるインフォームドコンセントのあり方,医療機関の定員制の問題や組織の柔軟性,さらに治験責任者医師等の研究倫理などの問題を浮き彫りにし,それらの問題解決が必要なことが認...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。