医学界新聞

2011.04.11

社会に信頼される専門医制度を


池田康夫氏
 日本専門医制評価・認定機構(理事長=早大・池田康夫氏)が主催する専門医制度推進支援事業報告会が3月9日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。既存学会の枠組みを越え新たな専門医制度構築に向けた取り組みが進む中,その中心を担う同機構では諸外国の制度などを参考にわが国に適した専門医制度の在り方を探っている。本報告会では2010年度に同機構が実施した事業から,フランスの専門医制度および米国ACGME(卒後医学教育認可評議会)による研修施設調査(サイトビジット)の視察,また本年度初めて実施したわが国での研修施設調査について紹介された。

 わが国の研修施設調査について述べた松田暉氏(兵庫医療大/同機構研修施設委員長)は,現在の専門医制度の課題として,書面のみの研修プログラム審査,医師育成よりも医師確保に重点が置かれていること,また各学会による施設の監査が未実施である点などを列挙。専門医制度の標準化には,制度だけでなく個別の施設やプログラムを認定する仕組みを取り入れる必要があるとし,試行的事業として施設調査を行ったと背景を紹介した。

 本年2月より開始した調査では,18の基本領域学会が推薦した21病院44診療科への訪問が予定されている。各施設には,病院機能評価を参考に作成した調査票に回答してもらうとともに,それを基に研修プログラムの評価や後期研修医へのインタビューを実施するという。氏は既に終えた調査から得られた印象として,専門医取得要件を上回る経験ができるプログラムもあった一方,研修プログラムの選択が個人に委ねられていることから,後期研修医を集めることが目的となっている施設が多かったと発言。また,専門医取得における症例経験の要件が欧米の基準に比べ少ないことから,計画性がなくても専門医が取得できてしまう様子が伺えたと語った。

 氏は,本調査で明らかになった各専門医制度の特徴や課題を,米国の事例も参考にしながらフィードバックしていくと説明。施設調査は将来の認証制度の柱となり,第三者機関によるピア・レビューの仕組みがわが国の専門医制度の標準化,質の向上,社会的意義の向上につながると結論付けた。

 支援事業は2010年度で終了するが,同機構では今年度新たに予算計上される厚労省助成金に基づき引き続き評価基準案や実地調査を行う予定。閉会に当たり,社会に信頼される専門医制度の確立をめざし活動を進めるとの方針が再確認された。

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