医学界新聞

寄稿

2011.03.07

寄稿

ハワイ大学内科研修で感じた
日米の医学教育システムの差異

片山充哉(ハワイ大学内科レジデント)


 最近,ハワイ州最大規模の病院であるQueens Medical Centerでレジデント教育を担当するDr. Bruce Sollと筆者らハワイ大学日本人レジデントで,日米の医学教育システムについてディスカッションする機会が何度かあった。この経験も踏まえて,ハワイ大学での相互評価システムや勤務時間制限,入院患者管理/外来研修,保険制度について紹介したい。

指導医とレジデントの相互評価システム

 ハワイ大学では,各科でのローテーションの最後に,共に働いた指導医やインターン,レジデントによる自分への評価表がe-mailで送られてくる。

 指導医からの評価は,その後のフェローシップ(専門科研修),就職に必要な推薦状に利用される。指導医の評価が高ければ,よい推薦状を書いてもらえて,質の高いプログラムに進むことができる。逆に評価が低ければ,プログラムディレクターと面談しなければならないこともあり,最悪の場合にはkick out(解雇)になる。

 日本では,評価システムによってレジデントが解雇されるなど考えられないことだが,実際に筆者の同期も数人が解雇されている。それまで一緒に働いていた仲間が急に病院に来なくなるのは,何とも寂しい。研修中に解雇されたレジデントは新しいプログラムに編入することもあるが,一度経歴に傷がついてしまうと,それもなかなか難しいようだ。

 逆に,レジデントが指導医を評価するシステムもある。継続的に低い評価が続くと,その指導医はレジデントと働くことを制限または禁止され,レジデントの助けなしで入院患者を管理しなくてはならないことになる。また,レジデントからの評価もしくは改善要望によって,ローテーションの内容や勤務時間,勤務シフトが大きく変化することもある。善しあしは当然あるが,レジデントの意見も反映させつつプログラムを改善しようとする姿勢は,日本も見習う必要があるだろう。

勤務時間制限のメリット・デメリット

 米国では,ACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education;卒後医学教育認可評議会)がレジデントとフェローの勤務時間を制限している。現在は,週平均で80時間,連続勤務は30時間以内などのルールがあり,米国のすべての州で義務付けられている。

 外来ではめったにないが,入院患者管理においては,重症患者の対応によって,この制限時間を超えることがしばしば起こる(その場合,前述の評価表に記載する必要がある)。該当するレジデントが多ければ,そのローテーションに問題があると判断され,勤務体系の変更を余儀なくされる。または,勤務時間の長いレジデントは仕事が遅く,業務遂行能力に問題があると判断されることもある。

 日本では,休日に病院に行くと,指導医から"熱心なレジデント"という目で見られることが多い。また,指導医よりも先に帰宅することが"御法度"という診療科もあるだろう。筆者も日本で研修していたころは,深夜・休日を問わず病院で患者さんを診ていた。しかしここでは,深夜・休日にレジデントが病院で患者を診ることは一般的ではないし,指導医もなるべく定時でレジデントを帰そうと考えている。

 レジデントが休みのときの患者管理は,指導医だったり他のレジデントだったり診療科によってさまざまで,一貫したルールはない。いったんサインアウトすると,担当患者が休日・夜間に急変して亡くなったとしても,コールを受けて病院に戻ることはまずない。こうして勤務時間が制限されることによって,レジデントとしては,帰宅後の勉強時間や家族と過ごす時間が確保される一方で,患者に対する責任感が希...

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