医学界新聞

寄稿

2010.12.06

特集

地域医療を担う総合内科医を育てる
――江別市立病院・総合内科研修


 "専門特化していない中小病院が持ちこたえ切れるかどうかは,病院総合医の今後の活躍いかんである"

(松村理司編『地域医療は再生する――病院総合医の可能性とその教育・研修』医学書院,2010)

 2006年に内科医全員が病院を去り,"医療崩壊"の象徴として大きくクローズアップされた江別市立病院(北海道江別市)。その後,総合内科を軸に据え,病院再生を実現したことをご記憶の方も多いだろう。そんな江別市立病院は今,地域医療を支える総合内科医教育の拠点病院として,新たな一歩を踏み出しつつある。本年5月には院内に「総合内科医教育センター」を開設し,10月には道から総合内科医養成研修センターの指定も受けた。魅力ある学びの場を創り,長期的視点で地域医療への貢献をめざす――同院の教育理念を探るとともに,後期研修の1日を追った。


早朝と夕方は勉強の時間

 「早朝勉強,昼間働いて,夕方勉強」が,江別市立病院総合内科研修のモットーだ。取材日は朝7時半から,インターネットカンファレンス()が行われた。この日のテーマは「鎖骨骨幹部骨折の文献紹介」。全国20-30の病院とネットワークをつなぎ,講師にはチャット形式で自由に質問ができる。

 その後,病棟のグループ回診を経て,昼から午後にかけては通常,外来・救急などに従事する。この日は院内で開催された「健康セミナー」の講師を後期研修医が務めた(写真(2))。「家庭医療ってなんでしょう――地域と患者さんの専門医」と題されたセミナーで,家庭医は,地域住民の健康に責任を持つ「地域の専門医」だと解説する。

 夕方からは循環器科とのカンファレンス。後期研修医2名が,それぞれの担当患者について,循環器内科医にコンサルテーションを求める(写真(3))。同様に外科ともカンファレンスを行う。

 最後は,臨床推論をトレーニングする症例検討会。提示されたのは「糖尿病と脳梗塞の既往のある肥満ぎみの67歳女性が,胃ろう造設目的で紹介された」ケース。経過をたどりながら,鑑別診断を行う。「感染症は?」「クッシング症候群かな?」などと議論は続き,副院長の阿部昌彦氏や総合内科主任部長の濱口杉大氏らが,アドバイスやヒントを与えてフォローする。検討会には,「総合内科が強いと聞いて実習に来た」という北大医学部の5年生も参加し,真剣に聞き入っていた。

写真 (1)「総合内科」が先頭に標榜された外来。(2)後期研修医が講師を務めた「健康セミナー」。「家庭医と総合医の違いは?」など素朴かつ鋭い質問が飛ぶなど盛況だ。(3)循環器内科医とのカンファレンス。PCI(経皮的冠動脈インターベンション)適応があるかなどをコンサルトする。画像の見方についてレクチャーを受ける場面も。

総合内科が入院患者の窓口に

 同院の臨床研修は,総合内科指導医と中堅医,後期・初期研修医がチームを組んで屋根瓦式の教育を行い,臓器別専門医や外部から招聘する講師が随時携わる仕組み。濱口氏は「総合内科の専門教育を受けた指導医が,研修医教育を行...

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