医学界新聞

2010.11.29

集学的治療で癌を「治す」「癒す」

第48回日本癌治療学会開催


 第48回日本癌治療学会が10月28-30日に三木恒治会長(京府医大)のもと,国立京都国際会館(京都市)他にて開催された。医療者だけでなく,患者・家族,行政など癌医療をめぐるあらゆるステークホルダーが集う本学会。今回はメインテーマの「癌を治す,癒す」に沿って,あらゆる領域の癌治療における最新知見とともに,緩和ケアや支持療法をはじめとしたより良い患者支援システムの構築に向けた演題が並び,わが国,そして世界を見つめた癌医療の在り方が議論された。本紙では,「治す」から分子標的薬剤の最新知見を,また「癒す」からがんサバイバーシップに関するセッションのもようを報告する。


癌との闘いの最先端を垣間見る

三木恒治会長
 分子標的薬剤は癌患者への福音となる一方で,副作用や治療費の面から新たな課題も生みだしている。シンポジウム「分子標的薬剤の新展開」(司会=九大・内藤誠二氏,国立がん研究センター東病院・江角浩安氏,阪大・土岐祐一郎氏)では,さまざまな癌治療における分子標的薬剤の最新知見がその課題を交え議論された。

 最初に登壇した大江裕一郎氏(国立がん研究センター東病院)は,非小細胞肺癌の治療について解説。トピックスとして,EML4-ALK陽性患者で劇的な効果を示したクリゾチニブを挙げ,ダサチニブやソラフェニブなどでも一部の患者で劇的に効果を示すことから,著効患者の背景にある遺伝子異常の解明に期待を示した。また,ゲフィチニブについてはIPASS試験を紹介し,「EGFR変異なし」もしくは「不明」の群ではゲフィチニブを使うべきではないと説明した。

 大腸癌については,朴成和氏(聖マリアンナ医大)が報告した。2007年に承認されたベバシズマブは,IFL療法との併用で全生存期間約5か月の延長効果を示し注目を集めたが,現在の標準治療FOLFOXやXELOXとの併用試験では,期待されたほどの効果はなかったという。またKRAS遺伝子に変異がある場合,セツキシマブは無効との報告を取り上げ,個別化医療への扉が大腸癌でも開かれたと説明した。

 引き続き,大津敦氏(国立がん研究センター東病院)が胃癌について解説。進行胃癌におけるトラスツズマブの臨床試験ToGAの結果を提示し,胃癌の約20%でみられるHER2陽性例で全生存期間の延長が認められたとした。これは,胃癌で初めて分子標的薬剤の有効性が証明された研究であり,今後は新しいカテゴリーとして「HER2陽性胃癌」が誕生するとの見解を示した。

 肝細胞癌については古瀬純司氏(杏林大)が報告した。肝細胞癌の治療アルゴリズムは,全身化学療法として初めて有効性を示したソラフェニブの誕生により大きく変わった。2009年5月の保険適用後現在までに約6000人が治療を受け,実臨床でも効果が実感されてきているという。

 卵巣癌では,国内で承認された分子標的薬剤はまだないものの,ベバシズマブによる臨床試験(GOG-0218)が進んでいる。熊谷晴介氏(岩手医大)は,その試験結果を報告。無増悪生存期間は3.8か月延長した...

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