理想の患者相談へ向けて,何をすべきか(赤林朗,阿部篤子,上野仁子,瀧本禎之)
対談・座談会
2010.10.18
【座談会】(2010年11月発行 『看護管理』第20巻第12号より)
理想の患者相談へ向けて,何をすべきか
赤林朗氏(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻医療倫理学分野教授/患者相談・臨床倫理センター長)
阿部篤子氏(東京大学医学部附属病院看護部副看護部長/患者相談・臨床倫理センター副センター長)
上野仁子氏(東京大学医学部附属病院 看護部外来看護師長)
瀧本禎之氏(東京大学医学部附属病院心療内科特任講師(病院)/患者相談・臨床倫理センター副センター長)=司会
2003年の医療法一部改正により設置が進められてきた患者相談窓口。しかし,限られた人員の中,対応に苦労する施設も少なくないのではないだろうか。
このたび,東京大学医学部附属病院患者相談・臨床倫理センターが患者相談の頻出ケースへの対応策や思考方法をまとめた『ケースブック患者相談』が出版されたのを機に,センター職員による患者相談の適正化をめぐる座談会が実現した。そこで,本紙ではその座談会のもようをダイジェストでお送りする。
患者相談・臨床倫理センターの概要
瀧本 東京大学医学部附属病院患者相談・臨床倫理センター(以下,当センター)は2007年4月に発足し,現在,医師・法律家等のサポート体制のもと,看護師と職員の計9人が協働して患者相談に対応しています。
赤林 当センター設立のきっかけは,2005年の患者相談業務の開始です。担当となった私はまず,患者さんからの相談内容を調べてみました。すると,医療訴訟になりかねない事例から医療者の応対に対する苦情まで,多種多様かつ膨大な問題があることがわかりました。それにもかかわらず,当時,医療訴訟に発展した問題以外は,医療事務職が1人で担当していたのです。そこで,事務系職員を増員すると同時に,法的なアドバイスを得るために,知己の法律専門家にアドバイザーを依頼しました。
次に,患者相談には精神医学的な知識を要するケースが多いことを考えて,心療内科が専門の瀧本先生に協力を求めました。さらに,院内を幅広い視野でとらえる看護職の能力を備え,患者対応の院内統一方針の作成という責任の大きい業務にふさわしい方として,阿部副看護部長に加わっていただきました。こうして主要な職員の配置を終え,現在に至ります。
瀧本 病院職員からの臨床倫理的な相談にも対応していますね。
赤林 先ほどお話しした相談内容の調査により,延命治療中止の判断や身寄りのない患者さんの治療といった臨床倫理的な問題を中心に,医療者からの相談も多いことがわかったためです。標準的な治療をしていれば過度な心配は不要のはずですが,現場では具体的な指示が求められているため,そのニーズに応えた形です。
患者相談窓口の整備が臨床をスムーズにする
瀧本 当センターの活動内容の紹介をお願いします。
阿部主要なものは,患者さんからの苦情,暴言・暴力への対応です。また,臨床倫理的な問題の発生が予想される症例では,臨床倫理コンサルテーションチームへの橋渡しをします。さらに,職員が2人一組で院内をラウンドし,トラブルの芽の早期発見・解決に努めています。
瀧本 外来病棟における当センターの活動に対する評価はいかがですか。
上野 何より助かるのは,困ったときにすぐ電話でアドバイスをもらえることです。また,ラウンドで気づいた点などを指摘してもらえるので,対応を改善することもできます。さらに,「要注意」の患者さんが来院した際には,トラブルに備えて待機してくれます。そのおかげで,安心して業務に専念することができるようになりました。
マンパワーと質のバランス
瀧本 市中病院の多くは,十分なマンパワーを備えられないまま患者相談窓口を運営しているのが現状だと思います。そうした状況でも,患者相談窓口を充実させていくには,どのような工夫が必要なのでしょうか。
阿部 人員構成の...
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