医学界新聞

寄稿

2010.10.11

【寄稿】

大腸3D-CT検査の多施設共同臨床試験JANCT
新たな大腸癌検査法の確立をめざして

吉田 広行,永田 浩一(マサチューセッツ総合病院3次元画像研究所/大腸3次元CT研究会事務局本部)
遠藤 俊吾(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター/大腸3次元CT研究会日本事務局)


欧米で普及が進む大腸3D-CT検査

 現在,日本の大腸癌罹患数は増加しており,死亡数は4万3354人(2008年)に上る。一方,大腸癌先進国といわれる米国での大腸癌死亡数は5万3221人(2007年)であり,しかもその数は年々わずかではあるが減少している。日本の人口が約1億2700万人,米国が約3億1000万人であるため,日本の大腸癌死亡数は人口比で比較すると米国の倍近く多く,日本のほうが今や大腸癌先進国と呼ばれるにふさわしい。にもかかわらず,大腸癌検診の受診率は20%程度で,さらに精検受診率は50%台と低く,これまでの大腸内視鏡検査または注腸X線検査が大腸の精密検査に代わる,受診率向上を促す検査法が求められている。

 さらなる検診受診率向上をめざす米国では,2007-08年にかけて15施設で約2500症例(無症状の患者)を対象とした「National CT Colonography Trial」(ACRIN 6664)を行い,大腸3D-CT検査(CTコロノグラフィ)の有効性を示すことに成功した。これを受け,08年3月に米国癌協会は大腸癌検診ガイドラインを改訂し,大腸3D-CT検査を初めて内視鏡検査と並ぶ有効な大腸スクリーニング法として掲載した。現在米国では,大腸3D-CT検査による大腸癌スクリーニングが確実に普及し始めている。同様に欧州でも,ドイツでのMunich Study やイタリアにおけるIMPACT Studyなどの大規模臨床試験で良好な結果が得られ,また現在進行中の臨床試験であるSIGGAR(英国),IMPACT2(イタリア)も,間もなく成功裡に終了することが予想されている。

普及が遅れる日本

 一方,日本における大腸3D-CT検査の研究および臨床は,単独の施設での術前診断における臨床応用例をそのままスクリーニングに拡大解釈・適用している場合がほとんどであり,欧米のような大規模な多施設臨床試験で大腸3D-CT検査スクリーニングの有用性を明確に示すエビデンスを出すには程遠い状況にある。

 このため,内視鏡に比較して受容性が高いといわれる大腸3D-CT検査を内視鏡の補助として導入することで,大腸癌のスクリーニングの範囲を拡大することは急務ではあるにもかかわらず,その導入・普及は欧米に比べて大きく遅れていると言わざるを得ないい。日本は諸外国に比べ内視鏡技術が格段に優れていることも,普及の遅れの一因であろう。日本の臨床の実情に沿った形で大腸3D-CT検査の普及をめざすには,まずは日本発の多施設共同臨床試験が不可欠である。

多施設共同臨床試験JANCTがスタート

 こうした現状を踏まえ,大腸3次元CT研究会では,日本における大腸3D-CT検査のエビデンスを確立し,スクリーニングも含めた臨床応用の実現をめざすべく,大腸癌検診および治療に精力的に取り組む先進的な13施設の賛同を得て,日本初の...

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