医学界新聞

2010.09.27

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために
[DVD-ROM付] 第2版

木村 淳,幸原 伸夫 著

《評 者》正門 由久(東海大教授・リハビリテーション科学)

臨床神経生理学的検査の基礎からすべてを解説してくれる“楽しい”本

 このたび,医学書院から『神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために』(第2版)が出版された。初版も読ませていただき,素晴らしい本であると感じていたが,さらにバージョンアップし,“かゆいところに手が届く”必携の書になったと感じる。本書は臨床神経生理学的検査,特に神経伝導検査と筋電図検査を行う者にとっては,まさに座右の書と言える。

 さて,本書の構成は,神経伝導検査の正常値(見ていて飽きない),序章(偉人たちに感謝),「第1部 神経筋の構造と機能」「第2部 神経伝導検査の原理と実際」「第3部 針筋電図の原理と実際」「第4部 症例から学ぶ筋電図」「第5部 知っておきたい基礎知識」「第6部 AAEM(米国電気診断医学会)用語集」の計6部から構成されている。さらに各部の終わりには知識を整理するためのQ & Aや,要所要所に「Column」というトピックス枠があり,日常診療の場で起きそうな疑問や話題に答えてくれており,本文にはない“楽しみ”がある。また各章末に○×式の確認問題があり,そこで復習できるようになっている。

 本書は,神経生理学に必須の“波形”を豊富に掲載しているのみならず,模式図を使用し,なぜそうなるのかをわかりやすく解説しており,それによって理解がさらに深まる。また第2版で新たに設けられた「第4部 症例から学ぶ筋電図」は大変興味深い。症例を通してわれわれが学ぶことの重要性は大きいことがわかる。

 本書の最大の特長は,その教材としてDVD-ROMが付録として付いていることではないだろうか。これまで,針筋電図検査ではオシロスコープ上に現れる波形や音がどれだけ神経生理学で重要であるかを理解していても,それを実際に学ぶとなると非常に困難であった。

 しかしながら,付録のDVD-ROM収載の筋電図波形を繰り返し見て聞き,本書を読むことによって,実際に針筋電図検査を行っているような臨場感が得られる。またDVD-ROMには著者(幸原先生)の講演も収載されている。これが珍しく,興味深い。このような著者の講演そのものが収められた本は今までなかったのではないだろうか。これによって,よりわかりやすい本になっており,もはや“付録”の範疇を超えているといえる。

 本書は臨床神経生理学の極めて完成度の高い教科書であり,わが国においてこのような書籍が出され,さらに進化を遂げたことはたいへん喜ばしい。本書を“楽しい”と感じるのは評者だけではないだろう。ページをめくるたびに楽しみが増すという不思議な魅力を持っている。ぜひ神経生理を日常行っている医師や検査技師に読んでいただきたい。また神経生理をこれから学ぶ方々にとっても素晴らしい本となるのは間違いない。木村先生,幸原先生に感謝申し上げたい。

B5・頁440 定価9,450円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00895-2


アトラス 細胞診と病理診断

亀井 敏昭,谷山 清己 編

《評 者》藏本 博行(日本細胞診断学推進協会副理事長/北里大名誉教授/(財)神奈川県予防医学協会婦人検診部部長)

細胞像と由来した組織像をあわせて提示

 細胞病理診断の素晴らしい啓発書が刊行された。

 細胞診は,細胞所見を検鏡して病変全体を診断する,つまり海上に飛び出している一部の所見をもとに氷山の全体を見極めるに等しい診断法である。したがって,細胞診断にあたっては,目では個々の細胞の微細な変異を読み取りながら,これとは逆に頭の中では広角カメラのように病変全体の組織像を思考する姿勢が求められる。そのため,細胞診断の専門家であるためには,細胞の微細な変異を読み取る能力ばかりでなく,病理組織像を理解しておくことが不可欠である。

 本書は,ともすれば細胞像の提示だけになりやすかったこれまでの細胞診の教本を脱却して,細胞像とこれらの由来した組織像をあわせて提示する,斬新なアイディアを基にして企画された,優れた啓発書である。両者の写真が美しく科学的であるばかりでなく,どこに着目すべきかを示すきれいなイラストも付けられている。しかも,細胞所見と組織所見の説明に加えて,定義,頻度や臨床所見,果ては一層勉強したい読者用に文献まで提示されている。さらに驚いたことに,1ページで完結する記載で,1ページを理解すれば1疾患がわかる構成となっている。心憎いばかりに行き届いた気配りである。

 日本臨床細胞学会では細胞診断の専門家(細胞診専門医と細胞検査士)を認定しているが,近年,細胞診専門医研修ガイドラインを策定した。社会から細胞診断を任される専門家がどのような専門的知識を心得ておくべきかを示す指針である。本書の編者はこのガイドライン策定委員会の中心的メンバーであった。本書に取り上げられた150例の癌・非癌病変は,ガイドラインに掲載されている,知っておくべき「必須」項目を細胞像と組織像で具現したものであるとも言える。また,本書の総論に記載された内容には,検鏡の前に心得ておくべき細胞に関する基礎知識が網羅されている。さらに,ガイドラインを超えて,各所に“Topics”として最新の知識がちりばめられているのには,正直,頭が下がる思いである。

 本書は,細胞診専門医をめざす医師にとって必見の教科書であるばかりでなく,細胞診専門医・細胞検査士や細胞診にかかわる臨床医のレベルアップのための,座右の書としてお薦めしたい。

A4・頁200 定価10,500円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00941-6


上部消化管内視鏡スタンダードテキスト

多賀須 幸男,櫻井 幸弘 著

《評 者》深井 学(医療法人財団 放友クリニック/一般社団法人 日本消化器内視鏡技師会 理事)

内視鏡スタッフの教育・指導にも最適

 機器の開発や手技の高度化により,消化器内視鏡検査・治療の進歩は著しいものがある。検査・治療の質が向上し,成果も飛躍的に現れている。これは内視鏡医の優れた技術と研鑽,そしてメーカーの開発努力によるところが大きいと思うが,質の向上では内視鏡のスタッフとしての内視鏡技師の役割も少なからずあると思われる。内視鏡スタッフの教育では,医療現場における内視鏡専門医の熱心な指導が形に現れ,消化器内視鏡学会認定の消化器内視鏡技師資格の取得者も増えている。

 内視鏡スタッフの教育,指導...

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