医学界新聞

対談・座談会

2010.09.20

【座談会】

IVR看護がもっと
身近になる!!

吉岡哲也氏(鳴海病院放射線科)=司会
松田麻衣子氏(福井県済生会病院)
米山美和子氏(静岡県立静岡がんセンター)
丹呉恵理氏(東京女子医科大学病院)


 X線や超音波,CTのガイド下で,カテーテルや針を用いて低侵襲に外科治療を行うIVR(interventional radiology)。安全で効率的なIVRの実施には,医師,看護師,放射線技師の“三位一体”のチームワークが大切であるとされ,特に患者さんとのかかわりにおける看護師の役割は非常に大きいものとなっています。

 一方,IVRにかかわる看護師に目を向けると,IVR室で専門的に携わる方,救急や手術部など他部署に所属しながら携わる方などその背景はさまざまで,現場では試行錯誤を繰り返しながらIVRを実施しているのが現状です。そこで本紙では,このたび『IVR看護ナビゲーション』(医学書院)を上梓した吉岡哲也氏(鳴海病院)とIVR看護を実践している3人の看護師を迎え,IVR看護の“いま”を語り合う座談会を企画。現代医療に不可欠なIVRを,看護師の皆さんがもっと身近なものに感じるきっかけとなれば幸いです。


吉岡 本日は皆さんのIVRとのかかわりから,IVR看護の“いま”について伺いたいと思います。まず皆さんのIVR看護歴からお聞かせください。

松田 私は,内科・外科病棟,外来を経て,画像診断センターに配属されました。IVRに携わり9年になります。

吉岡 9年間でIVRは変わりましたか。

松田 IVRの件数は増え,携わる看護師も4人から7人に増員されています。看護部にもIVR看護の必要性が認められてきたと感じています。

米山 私はIVRを担当して6年になります。当初は医師の指示をこなすので精いっぱいでしたが,治療内容や手技を理解できるようになってからはIVRにおける看護の役割がわかってきました。チームとしてIVRを施行できるようになってきたと実感しているので,患者看護も含めだいぶ成長してきたと思います。

吉岡 丹呉さんは現在,3人のなかで唯一病棟を担当されていますね。病棟とIVR室での,看護の意識の違いなどを感じることはありますか。

丹呉 IVR看護歴は合計6年ですが,病棟とIVR室の両方を経験して,看護そのものはどちらも変わらないと感じています。ただ病棟と比較すると,IVR室では短時間で看護を行わなければなりません。そのなかで患者さんとコミュニケーションを取り,患者さんがつらさを訴えることのできる環境を作らなければならないので,IVR看護の難しさを実感しています。

 施設ごとに異なるとは思いますが,IVR室の看護師自身のIVR看護に対する想いは年々高まっているので,病棟とIVR室との看護に対する意識の差は縮まっていると感じています。

吉岡 患者さんのIVRに対する意識も変わってきていますよね。「IVRをインターネットで調べてきました」という方が増えました。

丹呉 そうですね。私は現在外科病棟にいるのですが,開腹手術かIVRかを患者さん自身が考えた上で,低侵襲なのでIVRを行いたいと選択し,入院される患者さんが増えました。患者さんの意識も確かに高まりつつあるので,私自身は仕事がしやすくなりました。

効果的なIVR看護を行うには

吉岡 IVRは新しい技術や手技が次々に誕生している分野ですが,IVRの看護についてはどのように学んでいるのですか。

松田 私は『IVRマニュアル』(医学書院),『IVR看護の実際』(京滋IVR懇話会)といった書籍や論文を読んだり,研究会や学会に参加して学んでいます。またメーカーの方から新しい知識を得ることもあります。ただ,実際に看護を行う場合は,術前のカンファレンスで情報を得られるとよいと思います。

吉岡 確かに自習では不安を持ってしまう部分も,カンファレンスなどで確認できると安心ですよね。米山さんの施設では術前カンファレンスを行っていますか。

米山 一時期はありましたが,現在は行っていません。理想としては行いたいのですが,IVR施行医が2人しかいないため,マンパワー的にも厳しいのです。

吉岡 カンファレンスの重要性は認識しているということだと思います。もう一つ,患者さんの情報を得る手段として術前訪問がありますが,松田さんの施設では術前訪問を行っていますか。

松田 はい。当院では,TACE(肝動脈化学塞栓療法)の件数が多いため,その術前訪問を行っています。前日に独自の情報収集フォーマットを使用して電子カルテから情報を収集し,患者さんの情報を把握した上でIVRに携わります。検査データの結果が悪い場合,医師に確認してIVRが延期となる場合もありました。

吉岡 効果的に術前訪問が行えているのですね。

 私が術前訪問で問題だと思うものの一つに“告知”があります。ある施設では,肝細胞がんの患者さんの約半数には「血管腫」などの病名が伝えられていると聞いたことがあります。患者さんのなかには術前訪問で看護師に探りをいれる方がいますが,このときに看護師がたどたどしい返事をしたりすると,患者さんに“がん”と悟られてしまう恐れがあります。そのような事情もあり,その施設では,告知に対処できるシステムが整うまで術前訪問を延期しました。

松田 実際,術前訪問を行っていると「抗がん薬を使うのですか」「これはがんの治療ですね」などと患者さんから尋ねられる場合があります。当院では,告知していない場合は電子カルテに“告知未”と記載されています。しかし告知されていても,私自身が患者さんの疾患への理解度をしっかり把握できているわけではないため,「主治医からはどのようにお聞きになっていますか」と確認したりして,疾患に関する返答はしません。

吉岡 そのような対応のシステムは大切なことですね。インターネットで情報を得て看護師を質問攻めにする患者さんもいますので,術前訪問での対処法をしっかりと決めておくことが重要です。

■“顔”が見えることで看護がスムーズに

吉岡 初診から退院までの継続看護を行う上で,重要なポイントの一つに“申し送り”があります。私がよく遭遇するIVR室と病棟との申し送りは,IVRを受ける直前直後の患者さんにとって,最もケアが必要とされる時期のものです。しかし,申し送りの送り手と受け手の間に本当に必要な情報が交わされているのか,疑問に感じるときがしばしばあります。

 申し送りに関して,皆さんが工夫していることがあったら教えてください。

丹呉 電子カルテの記録を見て,IVR室からの申し送りの意図があまり伝わっていないと感じたことは確かにありました。そのため私がIVR室にいたときには,外来と病棟に向けた「勉強会」を年に2回開いていました。そこで,術前術後のケアやIVR室が病棟から何を申し送りしてほしいかなどを根拠を含め話し,お互いが理解し合えるように努めました。

 勉強会は交流の場にもなったようで,お互いの顔がわかれば話もスムーズに進み,IVR室に直接問い合わせも来るようになりました。現在は手技の内容について病棟から尋ねられたり,逆にIVR室から病棟に患者さんの様子を尋ねることもあり交流ができてきたと感じています。

吉岡 松田さんの施設はいかがですか。

松田 当院では基本的に申し送りはなく,入室時に持参した同意書や問診票,IVR術前チェックリストの確認を行っています。患者基本情報は,前日に術前訪問や電子カルテで情報収集し,当日でないと得られない直前のバイタルサインや前投薬実施といった情報は,IVR室で必要な情報を網羅した「IVR術前チェックリスト」を活用しています。そこでの情報をもとにIVR看護師から,「腰痛にチェックが付いていますが,2-3時間ならば大丈夫ですか」などと聞き返したりしています。

“マニュアル”で病棟とIVR室をつなぐ

吉岡 松田さん...

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