医学界新聞

2010.09.20

第36回日本看護研究学会開催


 第36回日本看護研究学会が8月21-22日,岡山コンベンションセンター(岡山市)他にて,深井喜代子会長(岡山大大学院)のもと開催された。看護における研究は,既成の科学の方法を取り入れる形で発展してきた。そのようななかで,看護の独自性をいかに示すか,あるいは独自性は放棄するのか。そのことを真剣に議論すべき時期が来ているとの趣旨から掲げられた今回のテーマは「看護における研究の未来を問う」。看護実践に資する研究のあり方や,看護の本質などについて,活発な議論が交わされた。本紙では,理論とクリニカルジャッジメント(臨床判断能力)・実践との関連性について議論された,シンポジウム「理論活用で磨くクリニカルジャッジメント力」(座長=京都橘大・高田早苗氏)のもようをお伝えする。


深井喜代子会長
 最初に登壇した筒井真優美氏(日赤看護大)は看護論・看護理論の定義や考え方について概説。看護理論は,患者のデータの整理・分析・理解,看護実践の意思決定,看護ケア計画,結果予測・評価など,看護実践にさまざまな示唆を与えていると述べた。また,実践家が看護理論に親しむためのヒント(原文ではなく解説書から読む,理論家自身の人となりを知る,など)を伝授した。さらに,実践において理論・概念を活用する際には,現状の課題を分析してその解決のためにどのような理論が適しているのかを吟味すること,理論の導入によって現場がどう変わったのかを評価することなどが重要だと述べた。

 勝原裕美子氏(聖隷浜松病院)は,管理者の立場から登壇した。氏はまず,同院で20年以上前から取り組んでいる看護論研修について紹介。研修ではナイチンゲールやオレムの看護理論について学び,それらの理論を用いて看護問題を明確化し,看護過程を整理しているという。氏は,理論の活用によって臨床判断の向上につながっているとした上で,新しい理論は誰がどのように取捨選択し現場に浸透させていくのか,優れた臨床判断をする人が理論を活用しているとは限らないのではないか,理論を実践に活用する際に事例検討以外の方法で学ぶことはできるか,多様な臨床判断のすべてを理論で磨くことができるのか,などの課題を挙げた。

 患者支援センターで勤務する塩...

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