シミュレーション教育最前線
寄稿
2010.09.06
【特集】医療シミュレーションが変える!! 日本の医学教育
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近年ますます活発化しているシミュレーション医学・医療教育。現在,多くの大学や研修病院では“シミュレーション・センター”が立ち上げられ,シミュレーション教育は一応の普及をみていると言える。しかし,機器はそろえたもののシミュレーション教育をより効果的なものとするシナリオや人材が不十分であり,十分な成果を上げることができていない施設もあるのが実情だ。
一方,質の高い医師養成のため,効率的な医学・医療教育に対するニーズは高まり続けている。そこで本紙では,わが国の実情に合わせたより効果的な医療シミュレーションの在りかたを探る特集を企画。シミュレーションを初期臨床研修プログラムに導入する慶大病院での実習を取材するとともに,シミュレーションを用いた新しい医学・医療教育の形を発信している池上敬一氏(獨協医大越谷病院)に話を伺った。わが国の医学・医療教育を変える医療シミュレーションの“いま”をお届けする(関連記事インタビュー,寄稿)。
看護師(以下,看)A「吉田さん,吉田さん,どうしましたか……。脈,呼吸がない。AED,救急カートをお願いします」
看B「AEDを取ってきました!!」
(AEDを起動させるも“ショックは不要です”のアナウンス)
看A「……」
医師「どうしましたか」
看A「糖尿で入院中の吉田さんですが,意識がなく,呼吸・脈がありません。また血糖が低値です」
医師「では,乳酸リンゲル液でルートキープをお願いします。40%グルコースを静注で,あと酸素をお願いします。モニターはどうですか?」
看B「……波形は出てますが,脈はまだふれません」
医師「……アドレナリンを静注で,挿管をするので準備をお願いします」
これは慶大病院の救急科研修における,病棟急変対応のシミュレーション実習の一場面だ(研修医と実習の講師が医師・看護師の役を務めている)。同院では,3か月の救急科ローテーションの中で,5回(意識レベル,外傷,縫合,病棟急変対応,災害医療を各回2時間で行う)のシミュレーション実習を,専用の施設で行う。同院での実習は,2-3人の少人数で,手技にとどまらずシナリオに基づいたシミュレーションを行うことが特徴。パニックに陥りやすい状況でも,手技を一つひとつきちんと行えるようになることを目標にシミュレーションを実施している。
救命の現場を模擬的に体験
今回実習に参加した研修医の河津桃子さん(左)と大久保恒希さん(右) |
今回取材した“病棟急変対応”での目標は,病棟を舞台に患者さんの急変に適切に対処できることだ。実習はBLS(一次救命措置)の確認から始まり,実際...
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