医学界新聞

2010.08.23

第22回日本看護学校協議会学会開催


 第22回日本看護学校協議会学会が7月27-28日,埼玉会館(さいたま市)にて荒川眞知子会長(日本看護学校協議会会長)のもと開催された。シンポジウム「共に育てる看護実践能力」(座長=横浜市医師会看護専門学校・南和子氏)では,看護師養成課程が変革期にあるなか,教育者と臨床指導者とが手を取り合い,学生の育成にあたることが確認された。

養成機関と実習病院が理解し合って協力を

シンポジウムのもよう
 まず桃田寿津代氏(緑生会横浜総合病院)により基調講演「保健師助産師看護師法改正を踏まえ,看護基礎教育に期待すること」が行われた。氏は,学生実習を積極的に受け入れてきた経験から,現場が求めているのは「確かな技術を持ち,患者に向き合える看護師」だと強調。少人数の教員が多数の学生を指導せざるを得ない養成機関の現状への理解も示しつつ,どんな学生でも看護師を志望しているからには,根気よく卒業まで指導してほしいと要望した。氏はキャリアパスや看護師を取り巻く法制度などの教育の必要性も示唆し,教育現場と臨床現場が協力して看護師人員増・離職減に取り組みたいと意気込んだ。

 次に佐藤麗子氏(神奈川県立平塚看護専門学校)が,県下の看護専門学校で導入中のユニフィケーションシステムを解説した。本システムは,教員が学校・行政・実習施設の三者の組織的支援を受けつつ1-2年間実習施設で活動し,相乗効果で看護教育・実践の質の向上を図るもの。成果として氏は,(1)教員が看護実践の楽しさを再発見し授業の充実につながる,(2)実習指導者との連携強化・継続教育に貢献,(3)公開授業や共同授業で教員・実習指導者の教育力が向上,の三点を挙げ,7年間の活動でシステムの有用性を実感したとして,その継続と発展に努めたいと語った。

 三浦昭子氏(共立高等看護学院)は,看護技術の修得に際しては,単に到達目標をクリアするだけでなく,個別性を考える,感情を共有するなど「どのように」できるかが重要だとした。それには臨床実習での教育目標の明確化や帰納的学習法などの工夫が要るが,教育カリキュラムの過密化や学生の質の変化,臨床現場での基礎教育内容の認識不足などの問題がある。氏は看護実践能力育成の方向性として,(1)疑似体験が可能な実習室や用具の整備・活用能力向上,(2)教員の看護実践能力強化,(3)臨床との連携強化,を示し,いっそうの検討を求めた。

 本田宏氏(済生会栗橋病院)は医師の立場から,日本の医療制度の問題点を明らかにした。氏は,日本の医療費は先進国中最低水準にあり,医師数の絶対的不足から勤務医が一人何役もこなしている現状や,病院の職員数が米国に比べ圧倒的に少ないことなどを指摘。医療現場にマンパワーを増やし,分業化を図ることが医療ミス・事故の減少に資する上,雇用の創出にもつながると主張した。

 最後に座長の南氏から,専門学校が結集して新たな力を発信していきたいと抱負が述べられ,盛会のうちにシンポジウムは閉幕した。

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