MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2010.08.09
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


岩田 健太郎,豊浦 麻記子 著
《評 者》青木 眞(感染症コンサルタント)
外来の実態に即した,現場のニードにマッチした本
本書は『感染症外来の帰還』と文学的なタイトルがついているが,優れた内科・小児科領域の感染症に関する外来診療マニュアルである。
自分が80年代前半に渡米し,内科専門のプログラムでインターンとして働き始めたとき,「メドゥピーズ」(英語でMed-Pedsと書く)という聞きなれないプログラムのもと研修する仲間がいた。Med-Pedsとは,内科と小児科の両者の訓練を受け,2つの領域の専門医資格を4年間で取得するというプログラムである。都市部における外来診療の核となるべき2つの専門性を一度に短期間で取得できるということで,特に将来開業をめざす医師たちに人気が高い競争の激しいプログラムであった。内科と小児科,両専門領域の感染症をカバーする本書も外来の実態に即した,現場のニードにマッチした本である。
さて本書の一部を紹介すると,まず基本的な構成は「目が赤い」「咽頭痛」「リンパ節腫脹」など日常外来診療で問題になる事項だけが章ごとに整理され,極めて読みやすい。また診療上の基本的なアプローチの仕方,考え方が「ルール」として整理されており,雑多な知識の集積になりやすい危険から本書を守っている。クループに関する「ルール」に「母親に抱っこさせたまま診察……」とあることに感心しつつ,やがて本書の「ルール」が診療上のPearlでもあることがわかる。これら各所に散らばるPearlは,著者ご自身の経験に加え恩師や仲間から受け継がれたものもあるに違いない。頻用する検査の適応,使用上のポイントなども現場に即した形で解説され,処方例も懇切丁寧,具体的で好感が持てる。
さらに所々に「ケース」として代表的な臨床状況が,その対処法と共に2-3行で簡潔に提示されている。臨床状況をたったの2-3行でEssentialな情報に整理・抽出する潔さ。それは研修医が成長する過程でみられる能力であり,よき指導医にみられる資質である。
外来診療は入院診療とは異なる。一般に外来のほうが医師として求められる力量が高く,腕の見せ所が多い。病態が成熟し,症状が出そろった時点で潤沢な検査を駆使できる入院担当医(後医)が名医ならば,これら名医になる条件が与えられていない外来診療担当医(前医)には臨床医としてのセンスとルールが頼りである。外来というやり甲斐のある反面,失敗や冷や汗と背中合わせの場所に本書が与えられたことは本当に喜ばしい。
個人的な感想を許していただけるならば,数ある岩田先生の著書の中でも本書は指折りのクオリティを持っていると言ってよいのではないかと思う。神戸大学に移られ教育者としてさらに経験を積まれた岩田健太郎先生が,豊浦麻記子先生という強力な共著者を得られ,現場に送られた本書。沖縄県立中部病院の喜舎場Spiritが伏流水のように流れる好著として推薦致します。
A5・頁488 定価4,935円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01009-2


堀尾 重治 著
《評 者》小寺 吉衞(名大教授・放射線科学)
刻々と変化する撮影法や読影法にも対応
本書が第8版と伺って驚くとともに著者堀尾重治氏の不断の努力と研鑽に敬服するばかりである。医用画像機器の進歩発展は著しく,その撮影法や読影法は刻々変化している。その中で,このような書を長く世に送り出すためには並々ならぬ力量が必要であることは言うまでもない。
本書を見てまず目に付くのは図が大変明瞭でわかりやすいことである。部位ごとに解剖図,撮影法,画像があり,それらの部位で考えられる疾患の画像として単純X線像が,必要であればCT像,MR像が繊細なタッチで描画されている。解剖図も画像も,すべての図が著者の手によって描かれているのが本書の大きな特徴であり,病態のとらえかたが初心者にも理解しやすい。また随所に参考・noteというコラムや表があり,症状の解説や読影のポイントなどが記述されている。
医用画像は診断・治療に用いられることは言うまでもない。読影医は平面の画像から生体患部を立体的に読み取るため,その画像がどのように撮影されたかが肝要となる。撮影角度がわずかに変わっても,各組織の重なりが異なってくることから見え方も変化する。したがって,撮影者と読影者の間には強い信頼関係がなければならない。この関係は一朝一夕に生まれるものではない。本書『骨・関節X線写真の撮りかたと見かた』は1986年に初版が出てから24年,その前身の書『骨単純撮影法とX線解剖図譜』から数えると39年の長きにわたって撮影法と画像の見かたについての書としてこの世界に送り出されてきた。その間,医用画像はアナログからデジタルに代わり,診断の主流もCTやMRIに移っていったが,本書は改訂を重ね,その都度変化に対応しながら多くの方々の期待に応えてきた。この書が撮影者と読影者の強い支持を受けていることがわかる。
画像を評価するにはコントラスト,鮮鋭度,雑音特性などの画質因子を用いる。従来の医用画像では主に高コントラストで高鮮鋭の画像が望まれていたが,最近はがんなどの淡い陰影の描出が主体となっているため,SN比(信号対雑音比)で評価することが多くなっている。今回の改訂では,画像に生じる微妙な濃淡の変化から病理変化を推定するために必要な知識を重点的に盛り込んでいるということで時代に即した内容になっている。
本書は,撮影法を勉強する診療放射線技師のみならず読影を行う者にとっても大変わかりやすい書になっている。また,骨・関節部の画像ということから,リハビリテーションに携わる方にも良好の書と言えるであろう。ちょうど,本年(2010年)4月30日付けの厚生
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