MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2010.06.28
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


富田 勝郎 監修
川原 範夫 編
《評 者》戸山 芳昭(慶大教授・整形外科学/慶應義塾 常任理事)
脊椎腫瘍手術バイブル
金沢大学整形外科主任教授をこの3月末に退官された富田勝郎先生が,在任中に取り組んでこられた先生の業績の集大成とも言うべき書『脊椎腫瘍の手術』が医学書院よりこのたび発刊された。本書の序文にも書かれているように,この書はまさに金沢大学整形外科,富田先生をリーダーとした一門が一つの目的に向かって脊椎腫瘍,特に転移癌と戦ってきた実録であり,手引き書,参考書である。教室の脊椎外科グループと骨腫瘍グループが一体となって基礎から臨床へと進め,実際の手術として世に送り出した術式であり,正真正銘の世界に発信すべき脊椎腫瘍手術書である。従来は全く手がつけられず,対症的治療を余儀なくされてきた転移性脊椎腫瘍,痛みに耐えられずに苦しみ,またまひのために寝たきりとなっていた患者さんへ,金沢大学富田チームが一つの光を差し入れた業績は見事という以外,言葉はない。痛みから解放し,まひも救え,生命予後をも大きく改善させ得る「Total En bloc Spondylectomy(TES)=腫瘍脊椎骨全摘術」の開発は称賛に値する。思い起こせば十数年前であったか,私が米国整形外科学会(AAOS)に出席した折,確か富田先生の本手術に関する講演が行われていた。その会場の最後列で私もそっと先生の講演を拝聴していたが,講演終了後に満席の会場でいわゆる“standing ovation”により,しばらく拍手が鳴り止まず鳥肌の立つ想いで見ていたことが昨日のように感じられる。私にはそのときの素晴らしい光景が今でも鮮明に焼き付いており,自分もいつか先生のように……と感じたことを思い出す。
さて,ご存じのようにわが国は世界一の長寿を享受できる国となったが,この高齢社会においては,国民がより健康で明るく元気に生活できる社会の構築が必要不可欠である。国民が求めている「健康」とは「健康寿命延伸」そのものであり,癌や心臓病,脳血管障害など生命に直接かかわる疾患群への対策が強く望まれている。同時に,国民への安全・安心な医療の提供が医療側に強く求められている。特に外科系医師にとっては,安全・安心な医療の提供とは「手術手技・技術」そのものと言っても過言ではない。
ただし,この手術手技の基本を支えるものは基礎研究に裏付けされ,臨床の現場でも十分に検証された手技でなければならない。この点も,本術式は教室員を挙げて,その妥当性や安全性等を十分に証明しており,まさに脊椎外科と腫瘍外科が一体となっての成果と言えよう。
本術式がさ...
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