医学界新聞

2010.05.31

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


教える人としての私を育てる
看護教員と臨地実習指導者

屋宜 譜美子,目黒 悟 編

《評 者》齊藤 茂子(都立荏原看護専門学校校長)

学び方を学び,教え方を学ぶ

教えることは学ぶこと
 看護教員や,臨地実習指導者は学生が看護を学ぶ最も近いところにいる。教師であり,看護師であり,研究者であり,マネジャーでもあり,そのありように学生が最も影響を受ける存在である。そのため「看護を教える人」の質が日本の看護の質を決めるといっても過言ではない。在院日数の短縮,新人看護師の早期離職など看護基礎教育を取り巻く厳しい状況の中で,「看護を教える人」が自らを成長させ,看護教育の質の向上を図ることは社会の要請であり急務である。

 本書は,屋宜譜美子先生,目黒悟先生をはじめとする19名のそれぞれの立場の方々によって書かれた哲学書であり実践書である。「教える人としての私を育てる」ことは新人教員もベテラン教員も生涯にわたり求められることであり,何度もひもときたい書である。講義・実習という授業をよりよいものにするためには,あらゆる場面を通して教材の解釈,教育内容の精選,教育技法の熟達,教材化の力が求められる。どれ一つとして安易に答えの出ないものであり,時には荷が重く感じられるときもある。そのようなときこそ学ぶことが必要である。教えることは学ぶことである。

魅力的な目次と構成
 魅力的なタイトルがつけられた本書の目次はさらに魅力的である。看護教員・指導者の存在意義や質の向上を強く感じている筆者にとっては,興味関心の高いキーワードがいくつも並んでいる。読み進むにつれて,本書が「看護を教える人」としての哲学に支えられた実践書であると認識した。本書は5つの章で構成されている。第1章からでも,心引かれる章からでも読み手を受け入れてくれるのは,各章の根底にある哲学が一貫しているためであろう。

豊かに語られる「看護を教える人」の学びと育ち
 第1章の,看護教員と臨床指導者の歴史的変遷は,「看護を教える人」の養成にかかわる者として興味深い。第2章は故藤岡完治先生と目黒先生の共著により,まさに「藤岡ワールド」が展開されている。「看護は問題解決過程なのか」「指導が指導になるとき・ならないとき」などの問いがちりばめられており,問うことによって,看護や教育が豊かに語られ,深められていくことを実感することができる。

 第3章は「看護を教える人」の養成カリキュラムが詳細に書かれている。「看護を教える学習者」はこれらのカリキュラムにより,学び方を学び,教え方を学ぶ。そして目からうろこの感動を経験し,自分がどのような人間であったかを知ることで,大きく成長する。本書の修了生によって語られた経験は,筆者も共感するところが多々あった。研修当時の感動がよみがえり,頑張る気持ちを新たにした。

 第4章は,「看護を教える人」の「共に学び共に育ちあう」実践が紹介されている。埼玉県における看護教員現任研修会の活動の成果は学会発表まで行われており,質の高いものとなっている。教員個々の努力や,養成所の努力はもちろんであるが,このように,組織的にシステム化し,教員の成長を支援する仕組みづくりも必要である。看護教員の継続教育モデルとして...

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