医学界新聞

2010.04.05

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


消化器外科レジデントマニュアル 第2版

小西 文雄 監修
自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科 編著

《評 者》篠崎 大(東大医科研病院外科科長/准教授)

珠玉のエッセンスを無駄なくコンパクトに込める

 好評を博していた初版の発行から4年を経て,自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科スタッフの先生方が執筆し小西文雄教授が監修された『消化器外科レジデントマニュアル 第2版』が刊行された。この本を一読すると,どこをとってもコンパクトな中に必要な知識やtipsを十二分に織り込もうとする強い意欲が感じられる。すなわち一語一語に至るまで無駄がなく,珠玉のエッセンスが込められている。

 内容は,前・後半で総論と各論に二分されている。総論の冒頭では「術前検査の進め方」として日常行われる検査の種々のチェック項目が並んでいるが,一つひとつ実践していくことで外科医としての基礎の基礎を身に付けていくことができる。また,最近の診療で大きな問題となっている「インフォームド・コンセント」には比較的多くのページが割かれている。その中には,基本的要件はもちろんのこと,代理決定・文書の必要時とその形式・裁判事例・告知など幅広くトピックスが取り上げられている。

 類書ある中で本書に特徴的な点の一つに,内視鏡下手術についての項目が独立して存在していることが挙げられる。監修した小西教授は内視鏡下手術が十八番であり,日本の第一人者であることから,他の項目にも増して充実している。手技やインフォームド・コンセントのポイントまでわかりやすく記載されており,至れり尽くせりといえよう。

 腹腔鏡手術のみならず,近年の消化器外科手術ではstapling deviceの上手な利用が必須となっている。しかし,意外にその種類や使用法などの記載は少ないのではないだろうか。この点,本書では第2版で新たに1項目を設けて,縫合・吻合器についても写真を多用し,一目で理解できるよう工夫されている。

 後半の各論でも必要な内容は押さえつつ,かつ無駄のない記載をする方針が貫かれている。各臓器の癌では大腸癌を例にとると,その内視鏡的診断の要点や標本の取り扱いに始まり,術式自体や大きく改訂された「大腸癌取扱い規約」のアップデートはもちろんのこと,術中損傷や合併症や感染対策,術後化学療法・フォローアップのポイントまで幅広く網羅されている。さらに,大腸疾患の項には近年急増している炎症性腸疾患の治療では,外科治療のみならず最近の生物学的製剤を含んだ内科治療についても,要領よくまとめられていることがうれしい。

 虫垂炎が1項目として独立し,10ページが割かれている。また,巻末近くに肛門疾患がまとめて取り扱われている。本書の対象は外科専門医取得をめざす若い医師である。彼らが術者としてデビューする前には,いつ手術があてられてもいいように普段の勉強をしておいてほしいが,いざ手術となると緊急であわただしい中で,もう一度確認しておきたい状況も生じるかもしれない。そんな場合にも本書は対応可能になっている。

 言うまでもなく外科医は,術中・術前後を問わず瞬時の判断を迫られる事態が日常茶飯である。本書は外科専門医をめざす若手医師のみならず,あらゆるサブスペシャリティーを含んだ外科系の若い医師のポケットに常時入れ,十二分に活用していただきたい一冊である。

B6変・頁368 定価4,410円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00851-8


ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス

山本 博徳,砂田 圭二郎,矢野 智則 編

《評 者》松井 敏幸(福岡大教授・筑紫病院消化器科)

DBEの基本の再確認に,必携のアトラス

 小腸内視鏡は,現在学会や研究会で研究対象として隆盛を極めている。また,日本に限らず世界でも臨床応用が急速に進んでいる。その礎をつくられた山本博徳先生の本ができた。

 過去を振り返ると,カプセル内視鏡(Video Capsule Endoscopy;VCE)の臨床応用が始まって間もなくダブルバルーン内視鏡(Double-Balloon Enteroscopy ; DBE)が作製された。当時のわれわれの心境は,「そんなの信じられない」であった。

 間もなく,DBEが実際に現れ,山本先生が指導に来られた。多くの驚きと期待でDBEの使用が始まった。壮大なマジックを見るような思いであった。それまで小生の施設では,小腸疾患の多くはX線検査で診断され,プッシュ式内視鏡や術中内視鏡で確認する作業が行われてきた。それで不自由はないと思ってきた。

 現在も小腸疾患の初回診断はX線検査が行われ,それは有用性を失ってはいない。ただし,そのような世界は九州のわれわれの関連施設に限られるようである。DBEの挿入技術は著しく進歩している。それに伴いDBEの診断能も日進月歩である。

 本書では,まず手技に関する総論に相当のページが割かれている。その内容は,「ダブルバルーン内視鏡の仕組み――なぜ,小腸全域を観察できるのか」「内視鏡検査を行うにあたって――知っておくべき基本事項」「ダブルバルーン内視鏡の挿入手技――効率のよい挿入に,基本原理はここでも活きる」「偶発症と防止策――特有の偶発症を理解することで,事前に防止できる...

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