医学教育をsubspecialtyとして学ぶという選択肢(菊川誠)
寄稿
2010.04.05
【寄稿】
医学教育をsubspecialtyとして学ぶという選択肢
菊川誠(University of Dundee Centre for Medical Education fellow/佐賀大学総合診療部)
私は現在,英国Dundee大学のCentre for Medical Education(CME) にて医学教育学を学んでいます。卒後研修を地域の病院で行い,離島診療所から大学病院まで総合診療を基本として診療に携わってきました。その中で,医学教育に興味を持ち,このたび英国への留学の機会を得て,医学教育学を勉強しています。私の経験を交えてCMEについて紹介することにより,自らの専門分野を医学教育にと考えている先生方の参考になれば幸いです。
CMEがあるDundee市は,英国スコットランドに位置する人口15万人の比較的小さな町です。日本にもCMEで学ばれた方が数人おられ,日本や世界で活躍されています。Dundee大学と言えば日本でもおなじみのOSCEの発祥地であり,またPortfolio,アウトカムが何かということを中心に据えて組み立てられた教育であるOutcome Based Education(OBE),SPICIE Model,Spiral Curriculumなどを発信して世界の医学教育に貢献しています。また最近では,エビデンスに基づいた医学教育の実践をめざすBest Evidence Medical Education(BEME)のコンセプトもここを中心として発信され,広まりつつあります。
今年Face-to-Faceコース(通学制)で学んでいる学生は私を含め11名で,出身国は英国・タイ・チリ・ヨルダン・タンザニア・オマーン・スウェーデン・パキスタンです。彼らとの交流を通して各国の医学教育の現状を知ることができるのも貴重な財産です。医師不足であること,医師のコミュニケーション能力向上が課題であること,ここ10年間で医学教育の急速な変化が起きていることなど,一見日本特有課題かと思っていたことも,意外に他の国でも同様であることに気付きました。
1年のコースにエッセンスを凝縮
Harden教授を囲んでFace-to-Faceコースの学生たち。2列目右端が筆者。 |
レクチャーの内容ですが,講義のプランの立て方,評価の仕方,スタディーガイドの作り方などの実践的内容から,評価の基礎,OBEの理論的内容,そしてリサーチの進め方まで,医学教育者に必要なエッセンスがまさしくSpiralで組み込まれており,各分野の理解が相互に深まるような仕組みとなっています。時には,各国の教育の現状をプレゼンテーションすることもあります。英語が得意ではない私にとってはストレスですが,これもいい経験です。
通常,Masterコースは2年制の国が多いと思いますが,英国は1年制が多いようです。Dundee大学でも,1年間の設定でプログラムされています。その分内容が薄いのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが,おそらくその予想は正しくありません。少なくとも私にとっては,課題提出は大変な労力を要します。
なお,Face-to-Faceコース以外にもDistanceコース(通信教育)で学ぶことも可能です。英国内から約1500名,世界73か国から約2500名の学生がDistanceコースで学んでいます。
医学教育学は発
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