『JIM』創刊20周年記念座談会(日野原重明,高木誠,福井次矢,松村真司)
2010.03.29
『JIM』創刊20周年記念座談会プライマリ・ケア/総合診療の過去・現在・未来 | |
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「専門分化ではない,ジェネラルで幅広い内科学のための雑誌を」という思いから発刊された『JIM(ジム)』は2010年1月,創刊20周年を迎えました。そしてこの春プライマリ・ケア関連3学会が統合され,総合診療/プライマリ・ケア/家庭医療は新たな局面を迎えます。この節目の年を記念して本座談会では,『JIM』の生みの親である日野原重明氏,初期に編集委員をお務めいただいた高木誠氏,福井次矢氏,そして現編集委員のなかで最も若手である松村真司氏にお集まりいただき,総合診療の今後の展望についてお話しいただきました。
(『総合診療誌JIM』2010年4月号「JIMで語ろう」より抜粋)
『JIM』創刊と総合診療の広がり
福井 本誌『JIM』が創刊されるまで,日本には,特にプライマリ・ケアにフォーカスした雑誌がありませんでした。そのような折に日野原先生が大変な努力をされて創刊に至ったわけです。
高木先生,『JIM』の編集委員としてのご経験はいかがでしたか? 編集の方針も画期的だったと思いますが。
高木 私は総合診療を専門でやっていたわけではないのですが,非常に興味を持っていましたし,『JIM』の編集委員を務めることでとても勉強になりました。他誌は疾患を特集のテーマに取り上げるのに対して,『JIM』ではよりジェネラルな視点を大切にしようという基本方針で,症状からのアプローチを基本に,内容も実践的なものとしました。
福井 症状からのアプローチを取り上げないときには,医療の横断的なテーマを特集で取り上げてきましたね。
松村 私が研修していた当時(1990年代前半)には,プライマリ・ケアに関する情報は大学にはほとんどありませんでしたから,『JIM』の特集記事にはとても助けられました。それに,各地の同世代の先生たちのレポートを読むのは大変刺激になりましたね。
福井 『JIM』が創刊された後,1990年代には非常に多くの大学病院,大きな研修病院に総合診療科が設立されていきました。そのような場で診療する先生たちをサポートするというような役割を果たす要素もあり,『JIM』はプライマリ・ケアや総合診療を広める役割を担ったのだと思っています。
高木 それは間違いないと思います。そして創刊の2年後に,第1回の総合診療研究会が開催されましたね。
ジェネラリスト新世代の広がり
日野原 日本ではどうしても,医療のあり方が大学病院の医局を中心に存在していました。どこか外の病院へ行くとなると,自分の専門以外のケースを扱わなければならず,妙な挫折を感じることがあったんですね。この大学の医局制が存在するために,プライマリ・ケアを広げるのが困難になったのですが。それでもだんだんプライマリ・ケアの研修を受ける人が増えています。よい研修病院での研修が評価されるようになって,やっと今日に至ったという状態ですね。
最近は,若いジェネラリストたちがグループ・プラクティスに関心を持って,訪問看護と一緒に在宅ケアを行うようになっていますね。私は先日,高知県のあおぞら診療所を見てきましたが,そのような若くて優秀なグループが日本のあちこちに誕生しつつあります。われわれがめざすものを,地でいくような若いグループが出てきたことで,私は非常に望みを持っています。
福井 松村先生はそのような先生方をよくご存じですね。
松村 ええ,確かあおぞら診療所上本郷の川越正平先生は,私と同じ卒業年次です。私自身は一貫してジェネラルな研修をしてきたつもりです。あえて言うなら総合診療・家庭医療が専門です。いまは開業して在宅医療も行っていますし,科を絞らず...
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