医学界新聞

2010.03.29

第37回日本集中治療医学会開催

領域,職種を越え,明日の集中治療を考える


 第37回日本集中治療医学会が3月4-6日,多田恵一会長(広島市民病院)のもとリーガロイヤルホテル広島(広島市)他にて開催された。「明日の集中治療――多領域の英知をシームレスに統合しよう」をメインテーマとした今学会では,病院前救急からER,手術室そしてICUへと続くクリティカルケアの流れを結びつけ,救急医・麻酔科医などの医師に加え看護師や臨床工学技士といった集中治療にかかわる多職種の統合を目的に,集中治療を横断的に考える企画が数多く並んだ。本紙では,そのなかから会長講演と,重症感染症を学ぶ教育講演,また心肺蘇生についてのシンポジウムのもようを報告する。


最良の集中治療を行うために

多田恵一会長
 会長講演「多領域を結ぶシームレスな集中治療を求めて」では,多田氏が自身の経歴を振り返りながら,集中治療のあるべき姿について語った。氏は麻酔科医としてキャリアを積み重ねてきたが,医師となった当初から患者の予後に関与したいという目標を持っていたという。そこで,麻酔管理・術前評価といった従来の麻酔科業務を飛び出し,臨床活動の範囲を拡張してきたと自身を振り返った。徐々に業務範囲を広げながら,病棟での重症患者の全身管理に積極的に参加することで“重症患者管理は麻酔科医”というコンセンサスを確立させ麻酔科医によるICU運営を達成,さらに麻酔・周術期管理・ICU・三次救急統括的管理の実現につなげてきたという。また,予後への貢献については,麻酔やICUにおける適切な患者管理や患者情報の集積が予後を改善するとともに,術後の合併症を防ぐことが1年後あるいは5年後の予後の改善にもつながっているという研究結果を報告した。

 氏は集中治療専門医が,重症患者の治療にあたるチームを継ぎ目なくまとめることで患者の予後に貢献できることを強調。一方で,全分野を一人で行うことができる“スーパーマン”はいないことから,集中治療にかかわる各医療者の専門をシームレスに結ぶことが重要とあらためて主張した。

 最後に,優れた集中治療を行うために必須なこととして,横断的医学知識と経験,全身管理・専門能力,多領域・多職種をシームレスに束ねる高いコミュニケーション能力,の3つを挙げ,既成の概念にとらわれず幅広い見識を持って治療にあたることが大切とまとめ,講演を終えた。

適切な感染症診断を学ぶ

 重症敗血症や敗血症性ショックを含む重症感染症は,救急・集中治療領域における最大の死亡原因であるため,その適切な診断・治療は非常に重要となる。教育講演「重症感染症の診断――微生物学的手法からバイオマーカーまで」では,最近の文献的知見を交えながら,重症感染症の診断法を志馬伸朗氏(京府医大)がレクチャーした。

 氏は,感染症診断の5つのポイントとして,(1)感染症を疑うこと,(2)重症度評価,(3)感染臓器・起炎菌の絞り込み,...

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