第33回日本高次脳機能障害学会開催
2009.11.30
古典症候に新たな介入方法で挑む
第33回日本高次脳機能障害学会開催
第33回日本高次脳機能障害学会が,10月29-30日,ロイトン札幌(札幌市)にて石合純夫会長(札幌医大)のもと開催された。「古典症候の解体から新たな介入に向けて」と題された今回は,進歩著しい画像診断などを活用して古典症候への介入の方策を探る多彩な試みが示され,会場各所で議論が白熱した。
失われた空間を取り戻す
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石合純夫会長 |
左半側空間無視患者は,例えば花の絵を描かせてみると,右半分しか描かない。このとき患者は,花そのものの認知は正常に成立しているが,左側を描かずに「完全な花の絵を描いた」と判断しているという。さらに,もし最初から左半分がない花を見ても,脳内での認識は「完全な花」であり,一方で絵を描かせてみると,やはり右半分しかない花を描く。患者にとっての左側は,見えない・さえぎられているとも思わない,「意識されない」空間なのである。それに対し,氏が対照例として挙げた左同名半盲の患者には左側空間が見えていない意識があり,全体を見ようと左方探索を行って,左側の物体の存在に気づくという違いがある。
氏はさらに,線分二等分課題において,左半側空間無視患者が真の中心よりも右側の点を二等分点として選ぶことに着目し,患者の視線を分析。その結果,視線は常に真の中心より右側に偏り,左側を探索することもなく右寄りの点を選択していた。さらに,患者が実際にどのような線分を見ているのか実験すると,病巣が後頭にある症例では,二等分点の左右にほぼ均等に伸びた線を見ているが,前頭葉に病巣がある症例では,二等分点の左側のほうが短い線分が示された。ここで氏は,二等分点が真の中心より右に寄るのは,線の切れ目がある右端から注意のアプローチが行われるためであり,左側については明確な線の切れ目を認識できないため結局二等分点の決定にはほとんど影響していないとする仮説を紹介。そのような場合でも,線分の左端にCueingを行うことで意識範囲は広がり,真の線分中点により近い二等分点を設定できるようになることも示した。
半側空間無視患者は,患側の喪失意識がないことから,自発的な患側探索が難しいなどリハビリにおける困難もある。しかし氏は,プリズム順応による脳の可塑性を生かした方法などさまざまなアプローチを行うことで,失った生活空間を少しでも取り戻していきたいと語った。
古典症候における新知見
シンポジウム「古典症候の解体から新たな介入に向けて」(司会=熊本大・池田学氏,北海道医療大・大槻美佳氏)では,若手研究者5名が新しい視点から種々の障害に...
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