医学界新聞

2009.11.02

第15回白壁賞,
第34回村上記念「胃と腸」賞授賞式開催


 9月16日,笹川記念会館国際会議場(東京都港区)で開かれた早期胃癌研究会の席上,第15回白壁賞と第34回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が行われた。第15回白壁賞は岩男泰氏(慶大内視鏡センター)・他「colitic cancer / dysplasiaの画像診断-拡大内視鏡を中心に」(「胃と腸」43 : 1303-1319, 2008)に,第34回村上記念「胃と腸」賞は中村昌太郎氏(九大大学院病態機能内科学)・他「消化管濾胞性リンパ腫の臨床的特徴-MALTリンパ腫およびDLBCLとの比較」(「胃と腸」43 : 1067-1079, 2008)に贈られた。

白壁賞は岩男泰氏らに

 白壁賞は,故・白壁彦夫氏の業績をたたえ,消化管の形態・診断学の進歩と普及に寄与した論文に贈られる。選考委員を代表して松井敏幸氏(福岡大筑紫病院消化器科)は,「癌,dysplasiaの拡大内視鏡像を主体とした膨大な研究であり,特に拡大内視鏡のIV型pit patternの有用性を強調している。今後の診断に当たる者にとって大変示唆に富む論文であると評価した」と選考理由を述べた。

 受賞者代表として,岩男氏は「潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌は非常に注目されている分野だが,発見することさえなかなか難しく,たとえ発見しても条件が悪く,よい画像を残すことができない場合が多い」とこの分野の現状を語った。その上で,「そのような苦しい条件の中少しずつ症例を集め,一例一例を大切に見ながら集積をした結果,このように賞をいただけたということは非常にうれしい。今後も,一例一例の症例を大切にしながら,一歩一歩前に進んでいきたい」と謝意を述べた。

「胃と腸」賞は中村昌太郎氏らに

 村上記念「胃と腸」賞は,故・村上忠重氏の業績をたたえ,消化器,特に消化管疾患の病態解明に寄与した論文に贈られる。選考委員代表の松井氏は「濾胞性リンパ腫を主体として,その他の悪性リンパ腫との違いを,臨床,形態診断学ならびに病理学,さらには治療経過までも含めた豊富な観点から分析しており,大変意義深い内容であると評価した」と選考理由を述べた。

 受賞者代表として中村氏は「1993年ごろから消化管悪性リンパ腫の研究をしており,今回の研究はその一環として濾胞性リンパ腫についてまとめたもの。研究を行うに当たり,多くの臨床と病理の先生方にご協力をいただいた。特に濾胞性リンパ腫は小腸病変が非常に多く,九州大学でいち早くダブルバルーン内視鏡を導入された松本主之先生(九大病態機能内科学)のお力がなければ今回の研究は成しえなかった」と研究過程を振り返った。その上で,「この受賞を励みとし,これからも一例一例を大事にし,さらに研究を進めていきたい」と今後の抱負を述べた。

岩男泰氏 中村昌太郎氏

*授賞式の様子は「胃と腸」10月号にも掲載されています。

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