医学界新聞

2009.10.12

家庭医療学夏期セミナーの話題から


 8月7-9日,第21回医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーがホテル磯部ガーデン(群馬県安中市)で開催された。本セミナーは,日本家庭医療学会学生・研修医部会の学生自らが企画・運営するのが特徴で,全国から家庭医療・地域医療に関心を持つ多数の医学生・研修医が参加した。本紙ではその一部のもようをお届けする。


行動変容を促す“LEARN”

セッションのもよう
 セッション「予防医学に使える行動科学」(講師=松下明氏・奈義ファミリークリニック)は,患者に行動変容を促すための行動科学(Behavior science)に基づいた医療面接法について,ロールプレイを交えながら学ぶプログラムだ。松下氏は,まず行動科学的なアプローチ法として「LEARNのアプローチ」を紹介。これは,“Listen:まず相手を知り”“Explain:患者との共通語で語り”“Acknowledgement:同じ土俵に立ち”“Recommend:患者に合ったプランを提案し”“Negotiate:いかに支援するか”の頭文字をとったもので,この5つのステップに沿うことで患者の心理状態を掴みながら行動変容を促すことができるというものだ。今回は,「酒量の増加とともに体重が増えた親戚のおじさんに,メタボリックシンドローム予防の観点から医学生としてどうアドバイスするか」というシナリオをもとに,参加者が“医学生役”を,また同クリニックの田原正夫氏が“おじさん役”を演じ,行動変容を促す方法を学んだ。参加者は,「なぜ酒量が増えたのか?」を聞き出し,適宜“褒め言葉”を織り交ぜながら,「酒量を減らす」や「運動」といった行動変容の提案を行う。ロールプレイ自体はほぼアドリブで行われ,田原氏から次々に提示される新しい状況に参加者が戸惑う場面も見られたが,「LEARN」に則りながらうまく対応していた。最後に,松下氏と田原氏による「LEARN」を意識した実演が行われセッション終了。氏によると,「医療面接の方法は医学生時代にも学ぶが,実際の患者を前にすると戸惑うことが多い。そのときには行動科学に基づいたアプローチが生かせる」とのこと。参加者は,身近な例を題材に行動科学を楽しみながら学べたようだ。

研修プログラムの内容を熱心に聞く参加者も多く見られた
 また,本セミナーでは,家庭医療学会認定の後期研修プログラムを紹介するポスターセッションも開催され,全国から25の施設が参加した。それぞれの施設は自慢のプログラムを医学生・研修医に説明し,熱心に聞き入る参加者の姿も多く見られた。未来の家庭医療を担う専門医への一歩がここからも始まっている。

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