経口抗リウマチ薬は併用すべきか(岡田正人)
寄稿
2009.10.05
【Controversial】
コモンディジーズの診療において議論のあるトピックスを,Pros and Cons(賛否)にわけて解説し,実際の診療場面での考え方も提示します。
経口抗リウマチ薬は併用すべきか
岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人,小児))
関節リウマチの診療は,1998年に生物学的製剤である抗TNF製剤が認可されて以来大きく転換した。それは,新たに関節リウマチを発症した大多数の患者において,関節の炎症という疾患活動性をコントロールすることが可能になり,それにより画像的な進行である骨びらんなどの関節破壊が起こらなくなり,長期にわたっても機能障害を来さないように治療ができるようになったことによる。臨床的,画像的,機能的寛解という目標がはっきりすることで,関節破壊が起こる前に炎症を抑え,不可逆的な機能障害を残さないことが治療方針となった。3か月ごとに関節の炎症が残っていれば治療を強化するT2T(Treat RA to Target)という概念が一般化し,糖尿病におけるHbA1cのように寛解という数値目標(Target)を持って治療を行うことが重要となった。
抗TNF製剤を中心とする生物学的製剤が関節リウマチの予後を大きく改善したことは確かであるが,一方で,ほとんどの先進国では生物学的製剤の使用率は30%未満であり,いまだに低分子経口抗リウマチ薬が治療の中心であることに変わりない。2008年には米国リウマチ学会によって,初期からの併用療法が推奨されたが(http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm220/pdf/news0089.pdf),2009年の欧州リウマチ学会からの推奨では単剤での開始が勧められている(http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm220/pdf/news0095.pdf)。また,単剤で開始した抗リウマチ薬で十分な効果が得られなかった際に,他剤に変更するか追加併用するかにおいても本邦でのプラクティスは一定していない。
【Pros】
2008年には米国リウマチ学会によって初期からの併用療法が推奨された1)(図)。抗CCP抗体などの予後因子が明らかになり,早期の関節破壊の進行が予測される患者においては,単剤よりも効果が高いことが期待される併用療法にて積極的に治療することが勧められている。また,併用することにより,効果発現までに2―3か月かかる経口抗リウマチ薬の治療効果判定の期間を短縮し,必要な患者においては遅延なく抗TNF製剤が開始できるという利点もある。
図 発症から6か月以内の関節リウマチ治療 |
米国リウマチ学会「関節リウマチ薬物治療の推奨2008年版」 |
【Cons】
2009年の欧州リウマチ学会からの推奨では,経口抗リウマチ薬の単剤での開始が勧められている。これは,抗リウマチ薬を服用したことのない患者においては,メトトレキサート単剤で治療した場合と最初からメトトレキサートに他剤を併用した場合で治療効果に大きな差はなく,副作用発現率は後者が高かったという結果による。無治療の患者においてはメトトレキサートのみでも過半数の患者において十分な効果が認められるため,メトトレキサートよりも効果の弱い他剤を併用しても有意な差が出にくいと考えられる。
【Pros】
単剤で開始した抗リウマチ薬で十分な効果が得られなかった際に,他剤に変更する群と追加併用する群を比較したBeStスタディ2)では,追加併用群において抗TNF製剤が必要になった患者......
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