千葉大学医学部附属病院Aiセンターの取り組み(山本正二)
寄稿
2009.08.10
【寄稿】
院内全死亡症例にAiを施行し,死因を究明する
――千葉大学医学部附属病院Aiセンターの取り組み
山本正二(千葉大学医学部附属病院Aiセンター・副センター長)
世界初のAi全例検査を開始して
千葉大学医学部附属病院では2005年11月,病理解剖前の死亡時画像検査としてAi(オートプシーイメージング)を開始した。それ以降,2009年6月までに200例以上を経験している。開始当初は,病理解剖前の死後画像検査という位置付けであったが,全国的な剖検率の低下は当院でも例外ではなく,正確な死因を究明し死亡診断書・検案書を作成するため,2008年1月から病理解剖が行われない症例に対してもAiを実施するようになった。
現在では,遺族の承諾が得られた院内死亡症例に対して,基本的に全例Aiを実施している。また,地域医療安全に貢献することは大学病院である当院の使命であるとも考え,外部からのAi実施要請に対しても,千葉県医師会の協力のもと検査を実施している。
大学病院レベルでのAi実施は,当院が全国初である。また,病院内で死亡した症例に対して遺族の承諾が得られた場合ではあるが,全例検査を実施している施設は,日本はもとより諸外国を見渡しても存在しない。
全死亡症例にAiを行うことで,何が変わったか
多くの病院でAiの取り組みが始まっているが,Ai単独の実施はエビデンスがなく,現時点では実施困難であるとの考えから,病理解剖前の検査として取り組むこととしている施設もある。一見もっともな意見に思えるが,こういった発言をするのは,救急搬送され異状死と判断せざるを得ない現実を知らない,あるいは監察医務院制度があり,そのような必要がない施設からの発言と考えられる。現実には,日本医師会のアンケート(n=2450)でも既に4割近い病院でAiを実施しており,解剖が実施される割合が3%程度しかない現状ではそのほとんどがAi単独での実施なのである。当院でも当初は病理解剖の症例に限ってAiを行っていたが,検査件数が病理解剖数に規定されてしまうため症例は増えなかった。実際に病理解剖の承諾がとれた件数が年間40例(2008年)では,Aiそのものの有用性を多くの臨床医に実感してもらうことは困難であった。
これらが全死亡例にAiを行うことによりどのように変化しただろうか。当初は検査時間の制約があったが,現在では日中の忙しい時間帯を除き,夜間帯でも検査の実施が可能となり,ほぼ全例実施の環境になっている。
救急部では,以前から死因が体表からではわからない症例に対してAiを行っていたが,院内の全例に実施する(費用は病院負担)と公表してからは,正確な死亡診断書・死体検案書を作成するためにAiを活用するようになっている。救急搬送される症例には,自宅での服毒自殺や幼児虐待などの外因死の可能性がある症例が含まれる。体表の情報からこれらを判断するには限界があるが,Aiを取り入れることにより正確な判断が可能になり,外因死などが疑われる場合には,所轄の警察署へ検視依頼を行っている。
院内の症例でも,「解剖の同意は得られないがAiなら」という症例がかなり多く,実施件数は飛躍的に増加している(図1)。...
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