第2回日本看護倫理学会
2009.07.20
第2回日本看護倫理学会
第2回日本看護倫理学会が6月6日,小西恵美子会長(佐久大)のもと,長野県佐久勤労者福祉センター(長野県佐久市)にて開催された。設立2年目を迎えた本学会には,700名を超える参加者が集った。今大会のテーマは「看護の心としての倫理――実践・研究・教育の協働」。実践者,研究者,教育者が協力し合って看護倫理を紡いでいこうという趣旨のもと,専門職としての在り方を改めて問い直す機会となった。
Anne J Davis氏 |
さらに,公平という倫理原則を取り上げ,臨床ナースが研究対象者や共同研究者として研究に協力する際,臨床ナースには患者に対する第一義的な倫理的義務を果たしつつ,学生に対する教育の義務,看護の向上のために研究に協力するという義務が幾重にも生じると指摘。教員が臨床ナースに対し必要不可欠な資源になることを求める以上,教員自身も臨床現場に貢献する義務を果たす必要があると述べた。
看護倫理を発展させる協働について語る
シンポジウム「実践・研究・教育の協働と看護倫理の発展」(座長=兵庫県立大・片田範子氏)では,実践,研究,教育など,看護職が置かれるさまざまな場において,いかに看護倫理に根ざした協働を行っていくかが議論された。
田村恵子氏(淀川キリスト教病院)は,倫理的問題を多く抱える終末期ケアは,学生にとっても倫理観を育むためのよい場であると指摘。しかし一方で,教育や研究におけるコラボレーションの目的は患者や家族のQOLの向上であるとして,学生への細やかな指導の必要性を説いた。研究についても,臨床で働く看護師が共同研究者として研究にかかわるなど,互いを補完し合う関係であることに気付きながら協働していく重要性を示した。
山内はるみ氏(聖隷浜松病院)は,自院における医療倫理問題検討委員会の取り組みを紹介。同委員会は,各職場から提案された倫理的問題について討議し,倫理にもとづく現実的な対応や方針を承認・勧告するという機能を持つが,実際には現場からの積極的な提示は少ない。「何かジレンマはありませんか?」と日々現場を歩きながら,現場における倫理観の向上に努めていると語った。
麻原きよみ氏(聖路加看護大)は,地域看護職のための教育プログラムの開発を通した自身の経験を紹介。現場の知識と技術を持つ実践者と,それを科学的に探究するための知識と技術を持つ研究者が現場の問題を解決し,現場に活用できる方法論を探究するには,互いの専門性を尊重し,ともに学び合う関係の構築が必要だと述べた。
高田早苗氏(前神戸市看護大)は,医療機関における看護研究の実施や受け入れに伴う倫理審査の状況について,07年に実施した全国調査の結果を報告。看護研究において倫理審査を課している施設が566施設中184施設であったことについて,倫理的配慮についての審査は社会的要請になっていると指摘。また,大多数の施設において外部機関からの看護研究依頼があるとの結果から,研究受け入れの基準や審査手順等の明確化を説いた。さらに,学会としても,人材育成支援や倫理審査指針の作成などに着手していくとの方針を示した。
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