医学界新聞

2009.07.20

適切なアセスメントを行うには

第15回日本看護診断学会開催


 第15回日本看護診断学会が6月27-28日,山勢博彰会長(山口大)のもと,福岡国際会議場(福岡市),他において開催された。今大会のテーマは「アセスメント能力を高める看護診断」。対象の身体的状況,心理的・社会的状況をいかに抽出し,看護診断につなげていくかが語られるとともに,診断によって明らかになった患者の問題に対し,専門職としてどのようにアプローチし解決に導いていくか,活発な議論が交わされた。


ロイ適応モデルを臨床,教育,研究に生かす

山勢博彰会長
 招聘講演「ロイ適応モデルとアセスメント」(座長=関西看護医療大・江川隆子氏)では,看護理論家としてその名を知られるシスター・カリスタ・ロイ氏(ボストン大)が,看護アセスメントにおいてロイ適応モデルをいかに活用していくかについて語った。

 あらゆる現象は,原因があって初めて結果が起こるという因果関係を持っているが,ロイ適応モデルでは,その原因であるインプットを「刺激」,結果であるアウトプットを「行動」と定義している。その上で,人間が刺激を受けてから,それに反応して行動を起こすまでには,対処プロセスというシステムのコントロールに相当するものが介在する。

 さらに,その対処プロセスには,個人に関係する調節器と認知器,集団に関係する安定器と変革器というサブシステムが存在するという。このなかで,調節器サブシステムは神経・化学・内分泌系,認知器サブシステムは認知・情動の対処経路に関与。安定器サブシステムは社会システムを維持する際に関係し,変革器サブシステムは環境の変化や成長に対応するための構造やプロセスにかかわるものだとされる。

 講演でロイ氏はまず,看護アセスメントは看護診断への架け橋であると言及し,「行動のアセスメント」について説明。行動には,個人レベルでも集団レベルでも4つの適応様式があり,前者として生理的様式,自己概念様式,役割機能様式,相互依存様式,後者として身体面,集団の特性,集団における役割機能,集団における相互依存を挙げ,それぞれの様式について解説した。さらに,これらの様式を用いて体系的にアセスメントを行うためには,観察と洞察力のスキル,測定能力,面接能力,各様式へアプローチするタイミングを見極める力などが必要だとした。

 次に,「行動に影響する刺激」について解説。刺激には,内的あるいは外的で,すぐに人に直面している焦点刺激,焦点刺激の影響に寄与している関連刺激,影響が明らかでない残存刺激の3つがあると述べた。また,刺激から行動に至るための適応に影響するものとしては,その人が属する文化や家族,発達段階などを挙げた。

 さらに,適応反応が起こる区域や範囲を設定するのが適応レベルであり,統合,代償,障害という...

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