医学界新聞

2009.07.06

Webで学び,症例検討で深める


一般的な講演会とは異なり,フロアとの質疑が重視された。
 時間や費用の問題で学会やセミナーへの参加が難しい医学生・研修医におすすめなのが,Web上のeラーニングだ。『レジデントのための感染症診療マニュアル』(医学書院)でおなじみの青木眞氏による臨床感染症講座が,(株)キューラメディクスの提供で始まっている。

 6月7日には,Web講座の受講生を対象にした症例検討会が慈恵医大で開催された。eラーニングで学んだ知識を実際の症例でどのように活用するのか,また指導医はどのように症例検討会を展開するのが効果的なのか。優れた教育者としても名高い青木氏の解説から,多くの示唆が得られた。

感染症診療の4つの軸と満載のパール
 まずは,青木氏によるWeb講座のおさらいからスタート。感染症診療の4つの軸((1)どの臓器/解剖に感染症があるか,(2)原因微生物は何か,(3)それに対する抗菌薬は何か,(4)熱や白血球で治療成果や感染症の趨勢を判断してはいけない),さらには「感染症が臓器にローカライズ(局在化)していくかどうか」という考え方の枠組みを持ちつつ診療に当たることが重要と強調した。

 続けて加藤哲朗氏(慈恵医大)が症例を2例提示した。これは一方通行のプレゼンテーションではなく,スライド一枚ごとに青木氏が自身の“見立て”を述べ,さながら推理小説のような演出をしていくもの。例えば,今回の症例は耐糖能障害のある患者であり,感染症診療の最初の軸(どの臓器/解剖に感染症があるか)が病歴や身体所見では判断しづらいと指摘。「糖尿病と聞いた瞬間,私は画像検査のいき値を下げる(オーダーをためらわない)」とした上で,“DM Hides(糖尿病は隠す)”という自身のクリニカルパールを紹介した。また,今回提示された症例は海外渡航歴のある患者であることを踏まえ,CDC(米国疾病予防管理センター)のWebサイトなどで現地の感染症情報を確認することも重要であるとした。

 その後も,入院時の検査所見やその後の経過のスライドごとに,青木氏が参加者らに“自ら考えること”を促す。発熱の3要素(magnitude,duration,pattern),体温と脈拍の相関,さらには「診断の達人」として名高いL.ティアニー氏が生み出したパールまで披露。成書では学べない臨床の生きた知識を,提示された症例と関連づけて解説した。参加者らは,Web講座で学んだ知識を,実際の症例をもとに深めることで,学ぶことの楽しさを実感したようだ。同講座は,キューラメディクスWebサイトから申込みができる。

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