医学界新聞

2009.06.29

運動器障害対策で議論が白熱

第44回日本理学療法学術大会の話題から


 第44回日本理学療法学術大会が5月28-30日,柳澤健会長(首都大学東京)のもと,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。

 国民の高齢化や生活リズムの多様化に伴い,理学療法に期待される役割はますます大きくなっている。会場では,そんな期待に応えようとさまざまなテーマで白熱した議論が展開された。


早期発見と救急外傷対策が課題

 「『運動器の10年』世界運動トークショー」(司会=「運動器の10年」世界運動日本委員会・中山彰一氏)では,運動器の重要性の周知や運動器障害の予防・早期発見・治療体制の充実へ向けて2000年に始まった「運動器の10年」世界運動が9年目を迎えたのを受け,現在の課題と今後の活動方針などが発表された。

 まず,同運動の日本委員会運営委員長である松下隆氏(帝京大)が登壇し,2000年からの8年間の歩みを報告。委員会が発足以来取り組んできたことの一つは,学校における運動器検診整備・充実をめざした学校保健法の改正である。現在,学校の運動器検診は側弯症に対するものに限られている。しかし,島根県の小中高生4827人を対象にした調査では,現行の学校定期健診で検査対象疾患の発見率よりも高い5.8%(103人)の児童・生徒に運動器の異常があったことを指摘。今後も対応を急いでいく方針だ。

 高齢者に対する対策も行われてきた。氏は,高齢者が要支援・介護になるときの主要なきっかけは関節症などの運動器障害である点に着目。運動器障害の予防により,要支援・介護の状態になるのを防ぐことができるとして,同委員会は高齢者検診に運動器の項目を加え,運動器疾患の早期発見・早期治療体制の確立をめざしている。

 もう一つ見逃せないのは,救急外傷を重点的に治療する救急外傷センターの設立・整備である。ドイツでは,総人口8000万人に対し40か所の外傷センターがあり,国土のほぼすべてを外傷センターから50km圏内にカバー。ドクターヘリによって救急要請から30分以内にセンターへ搬送することが可能であり,わが国でも同水準の体制を整えていくことをめざすという。

 このあと開催されたトークショーでは,冒険家で日本委員会親善大使の風間深...

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