医学界新聞

インタビュー

2009.04.20

interview
網野寛子氏(東京都ナースプラザ所長)に聞く

“後輩の養成”という専門職としての役割を果たすには,看護職のさらなる自立が必要


 近年の社会変化に伴い,看護職にはより高度化した技術力や判断力,コミュニケーション能力が求められるようになってきた。看護基礎教育の4年制化の論議も進むなか,職業教育の場であった看護学校にとって,パラダイムシフトは喫緊の課題となっている。

 本紙では,昨年12月に発刊された『看護教員のための学校経営と管理』の執筆者のお一人である網野寛子氏(東京都ナースプラザ所長)に,今看護学校の教員に求められている力と,それを学校経営に十分に生かすためのマネジメントの秘訣についてうかがった。


教育力,研究力,実践能力,マネジメント能力

――医療に対する社会的な関心が非常に高まるなか,どのような看護師が求められているでしょうか。

網野寛子(あみのひろこ)氏
網野 今,医療のみならず福祉,教育,産業などあらゆる場で看護が必要とされています。また,医療も多様化し,各病院の機能によって,医療レベルもさまざまです。

 高度医療などの最先端の現場では非常にハイレベルな技術が求められる一方,慢性疾患中心の病院,高齢者が多い施設などでは,対象に即したアセスメント能力,それを解決するための看護技術が求められます。ですから,自分が所属している機関がどのような特性を持つのかをよく理解して,組織目標に適うような能力を身につけていくことが重要です。

――そのような看護師を育成するために,教員にはどのような力が必要でしょうか。

網野 教員にいちばん必要なのは教育力です。さらに,看護師としての実践能力,自分の教育活動を検証するための研究力,それから後輩の育成や学校をよりよくしていくための役割を担うマネジメント能力,この4つの能力が必要です。

 実践能力については,都立看護専門学校では2003年に教員の臨床研修を制度化しました。長期の臨床研修は3か月間,短期は12日以内で,最新の医療に接して実践能力を磨くとともに,そこで出合う医療技術や事例を授業に生かすための学びの場としています。この制度をつくったのは,学生から「先生たちは昔の話はできるけれど,今の話ができない」と言われたことや,教員歴の長い人ほど臨床から離れている年数が長いという調査結果がきっかけでした。

 教員が自ら学ぶという姿勢で臨床現場に入るようになったことで,臨床の方たちとの交流も深まったと感じます。

――教育力の向上について個々の教員ができることはどのようなことでしょうか。

網野 個々の教員がいちばん努力すべきことは,自分が教える科目,単元のコマ数のなかで何を教え込まなければいけないか,何のためにこの要素を盛り込まなければいけないのかをきちんと認識することです。次に,学生の力に応じて,一斉の講義を行えばいいのか,グループワークを入れたほうがいいのかといった方法論を,自分で選択できること。さらに,自分の授業を他の教員に見てもらって批判を浴びるのを厭わないこと。その積み重ねによって,教員自身も伸びていくと考えています。

看護職のさらなる自立を

――組織として最大限の力を発揮するために,網野先生は管理者としてどのようになさってきましたか。

網野 まず,各教員がどの程度の力を持っているかを冷静にみていきます。その上で,教員の能力を向上させるための支援を行うと同時に,他の教員との組み合わせのなかでよい相互作用が生まれるように取り計らっていました。

 例えば,1年生は入学式直後に講義が始まり,たくさんの知識を頭に入れていかなければいけません。ですから,1年生の担当には基礎看護学を専門とし,よく指導できる,責任感の強い教員が適任です。その分,2年生の担当は温かみのある人,というように,各教員の個性を見極めながら,役割を与えます。えも言われぬさじ加減があるんです(笑)。

――学校経営の大きな柱や目標を組織全体に浸透させるためにはどのようなことが必要でしょうか。

網野 私は,看護師にとっていちばん大切なことは,常に自分の足りない部分を勉強し続けていく人であること,困ったときに自分自身で問題解決できる人...

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