第36回日本集中治療医学会開催
2009.04.13
『内外合一・活物窮理』の医療へ
第36回日本集中治療医学会開催
第36回日本集中治療医学会が2月26-28日,篠﨑正博会長(和歌山医大)のもと,大阪国際会議場(大阪市)にて開催された。
集中治療の現場は診療科に基づく疾病の区分を超えた知識・技術が必要とされ,患者の生と死を賭けた治療が行われている。「医療における内外合一・活物窮理」をメインテーマとした今回は,医師・看護師・コメディカルらが一体となって,白熱した議論が行われた。本紙では,その一部を報告する。
篠﨑正博会長 |
容態急変を未然に防ぐために
パネルディスカッション「集中治療スタッフによるMET(Medical emergency team)/RRT(Rapid response team)」(座長=岡山大・森松博史氏,秋田大・多治見公髙氏)では,患者に起こる心肺停止や後遺症などの有害事象の発生を未然に防ぐための方策の一つとして,METおよびRRTが議論された。
まず,内野滋彦氏(慈恵医大)からRRS(Rapid response system)の概要が語られた。心肺停止をはじめとする有害事象の発生には,発生の数時間前に,バイタルサインなどに何らかの前兆が認められるという。これらの前兆を早期に発見し,治療協力を行い,有害事象の発生を防ぐことがRRSの考え方である。具体的には,医師指導のもと,薬剤投与・気管内挿管などほぼすべての重症患者管理が可能なMETや,ナースや理学療法士の指導のもと気管吸引や酸素投与などの基本手技やアセスメントを行うRRTなどの形で活動していると述べた。
では,容態急変の前兆を知らせる因子とは何なのか。鈴木聡氏(岡山大病院)は,ICU入室初期の患者のバイタルサインとICUにおける死亡例との関係を調べた。その結果,最大心拍数と尿量の変化が重要な前兆になることがわかった。このことから氏は,普段から観察しているバイタルサインだけでも容態急変の予測が可能であると指摘。その一方で,今回の調査でバイタルサインの観察の不徹底さも見えてきたとし,注意を促した。
容態急変をいかに見つけ,命を救うかという点でも工夫が必要である。山口大介氏(東大病院)は,広大な同院で容態が急変した患者を見逃さないために,医療職に限定しない全病院職員がRRTを要請することができる態勢を敷いていることを紹介。この際,心肺停止症例に対しては経皮的心肺補助装置を用いて積極的に蘇生に当たるという。異変を感じたら,軽度の急変を重度であると誤認するオーバートリアージを恐れずに,すぐRRTを要請できる雰囲気作りが大事といえそうだ。
横山広行氏(国循)は,米国の院内心停止登録調査(NRCPR)にならって,日本でもそのようなデータ集積が必要であると指摘。その上で,国循にて実施した心停止症例に関するデータを示した。NRCPRと国循におけるデータを比べ,施設ごとの特質と考えられるような違いもみられることから,全国規模でデータを集積する際には,各施設ごとの特質を考慮することの必要性を付け加えた。
中敏夫氏(和歌山医大)は同大病院におけるMETコールシステムを紹介。先ほどの山口氏が発表したシステムとの違いは,明確なMET招集基準だ。オーバートリアージおよびアンダートリアージ(重症の容態を軽度であると誤認すること)を避けることができるだけでなく,医療者の経験に依存しない客観的な判断ができることになる。この結果,METコールの件数自体に変化はないが,MET招集基準の理解が,患者に対する注意を高め,主疾患以外での死亡は減少したという。
基調講演「集中治療における看護師の役割――集中治療の中で看護師ができること」では,道又元裕氏(杏林大病院)が看護師の能力を最大限に発揮できるような職域の獲得に向けての方策を述べた。氏はまず,現在の医療におけるマンパワー不足を踏まえ,看護師にはその高い能力・知識を発揮することが期待されていると言及。その上で,看護師の職域拡大へ向け,現在の業務内容の整理・把握により,自分たちにできる新たな業務の範囲を明確に示すことなどを呼びかけた。
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