医学界新聞

寄稿

2009.01.19

寄稿
沖縄にドクターヘリを導入して

井上 徹英(浦添総合病院院長)


日本のドクターヘリの拠点はわずか14か所

 ヘリコプターを使うことにより,傷病者が発生した現場,あるいは離島やへき地など搬送に時間がかかる場所に医師を迅速に送り届け,いち早く治療を開始して搬送することができる。欧米などの先進国では既に常套手段として整備されており,例えばドイツでは全国80か所に医療用ヘリ基地が整備されている(表)。アメリカは500か所を軽く超える。医療用ヘリをドクターヘリと呼称しているのは日本だけだが,2008年の時点でその拠点は14か所。人口の多い先進国としては非常に少ない。

 ドクターヘリ等導入における国際比較
アメリカ
合衆国
ドイツ フランス スイス
連邦
オース
トラリア
連邦
日本
開始時期 1972年 1970年 1983年 1952年 1928年 2001年
搬送体制 ・主として24時間体制
・各搬送主体が有するプログラムに従いヘリが派遣される
・看護師,救急救命士が添乗
・主として昼間の運航
・州政府又は関係団体が運営するコーディネーションセンターへの要請を受け,必要に応じヘリの出動が行われる
・医師が添乗
・昼間のみの運航
・全国共通番号から救急医療庁への要請を受け,必要に応じヘリの出動が行われる
・医師が添乗
・24時間体制
・国内外から緊急電話番号によるREGAコントロールセンターへの要請を受け出動
・医師が添乗
(RFDS)
・24時間体制。無線連絡
・医師が添乗(NSW州)
・200kmまたは飛行時間1時間程度のものに適用
・必要に応じ医師が添乗
・主として昼間のみの運航
・医師,看護師が添乗
拠点数 546か所
(2004年)
80か所
(2008年)
38か所
(2008年)
13か所
(2005年)
35か所
(2007年)
14か所
(2008年)
財源・
費用負担
・搬送主体によって多様な形態(公的機関の場合は公費,民間事業者の場合は民間保険等) ・主として公的医療保険及び民間医療保険を財源・救急搬送サービスを給付 ・固定費用については国費負担,運航費用については病院,自治体,寄付により賄う ・REGA会費と寄付が中心
・運航費用については,サービスを受けると費用が利用者に請求される
(RFDS)
・公費,寄付,基金が中心(NSW州)
・民間事業者と契約
・都道府県と国が半分ずつ負担
平成18年9月14日厚生労働省医政局指導課作成表より抜粋,一部改変

 当然ながらヘリが万能というわけではない。有視界飛行のため,悪天候のときは飛ぶことができず,安全に夜間飛行するためには追加装備や訓練,照明などの整備が必要でそのためには莫大な費用を要し,民間ベースでの恒常的な夜間飛行は現実的でない。松江市で2008年11月15...

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