医学界新聞

2008.12.08

超多剤耐性結核の治療に大きな一歩


 財団法人微生物化学研究会はさる10月28日に記者会見を開き,超多剤耐性結核菌(XDR‐TB)に有効な治療薬の開発をめざし,米国のリリー結核創薬イニシアチブとの共同開発研究を開始したことを発表した。この開発グループは,微生物代謝産物から発見した化合物CPZEN‐45に注目し,この化合物の大量合成法の確立および安全性試験等を経て,2012年の臨床試験開始をめざす考えだ。

 結核患者は現在50か国でみられ,毎年910万人が発症,170万人が死亡しているといわれるが,効果的な治療法・新薬がない。そんななか1998年に,結核治療における第1選択薬であるイソニアジドやリファンピシンに対して耐性を示す多剤耐性結核菌(MDR‐TB)が発見されたことに続き,2006年にはニューキノロンなどの第2選択薬に対しても耐性を示すXDR‐TBが出現し,結核菌の脅威は拡大し続けている。

 この状況を受けて,微生物化学研究会では1997年より抗結核薬探査研究を開始。微生物代謝産物の中から,既存の結核薬と異なる作用機序をもつ新しい化合物を探す方針のもと,2003年に発見したCPZEN‐45がXDR‐TBに対して強い抗菌活性を示すことを確認した。その後もCPZEN‐45の有効性の試験を行い,今年,米国で結核治療薬の開発・開発支援をしているリリー結核創薬イニシアチブとの共同開発研究を開始した。

 会見では,リリー結核創薬イニシアチブのGail H. Cassell氏が,結核菌が世界中で猛威を振るっている現状を説明。さらに,「結核は決して過去の病気ではなく,対策を急ぐべき恐ろしい病気」と述べて警鐘を鳴らすとともに,CPZEN‐45の開発を急ぐ考えを示した。

 さらに微生物化学研究会の赤松穣氏は,これまでの開発研究の経過を示したあと,「XDR‐TBに有効で,10剤耐性結核菌にも高い有効性がある」「高い安全性を有する」「耐性菌の出現頻度が極めて低い」といったCPZEN‐45の特徴を挙げ,「大きな効果が期待できる。一日も早くベッドサイドに届けたい」と意気込みを語った。

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