第46回日本癌治療学会開催
2008.12.08
第46回日本癌治療学会開催
患者と医療者をつなぐ「和と輪」で癌に挑む
第46回日本癌治療学会が10月30日-11月1日,平川弘聖会長(阪市大)のもと,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)で開催された。コミュニケーションの重要性が叫ばれるようになって久しいが,それは癌治療においても同じであり,患者への接し方には配慮が重要になる。また,今日の癌治療を全体的な視野で見ても,そこには多様な業務・治療法があり,治療の進行においても診療科間,職種間の連携が不可欠になってきている。「和と輪」をメインテーマとした今回は,第67回日本癌学会との共催のもと,癌治療の各分野で奮闘するエキスパートたちが,互いの取り組みを示し,理解しあうことをめざし,活発な議論が行われた。本紙では,その一部を報告する。
会長講演では,腫瘍外科医である平川氏からみた癌診療の現状と今後に対する考えが述べられた。わが国の癌治療が世界でもトップレベルにあることから,今後の癌診療では,生存率や生存期間などの成果だけでなく,低侵襲性や緩和医療といったQOLの保証,医療費増大を食い止め得るコスト面での優位性が求められているとした。
続いて,癌診療における腫瘍外科医の役割を考察。現在,腫瘍外科医の業務は,手術と周術期の管理という本来の業務に加えて,化学療法,画像診断など広範多岐にわたっている。この点を踏まえ,氏は「がん治療認定医」の普及と,癌診療の集約化を図ることで,癌診療の効率化をめざす考えを示した。そうすることで,人材の適正配分が行われ,研究活動の臨床への還元,臨床レベルの向上というプラスの効果が期待できるとした。
標準的治療と先端治療の両立を
国民がスムーズに癌診療を受けるための診療体制の整備も求められている。特別講演を行った今井浩三氏(日本がん治療認定医機構)は,国民にとって,明快で利用しやすい癌診療体制をめざして,がん治療認定医の育成に取り組んでいる。氏は,地域・施設・病状にかかわらず受けられる治療と,病状に応じた専門性の高い治療がスムーズにつながっていく治療体制を国民は求めているとした。その上で,癌診療における標準治療・臨床試験・臨床研究を担うがん治療認定医と先端的治療開発研究を行う各種癌専門医との2層から成る体制で癌治療を担っていきたい考えを示した。
セカンド・オピニオンが患者の心を後押しする
患者の不安の解消も医師の大事な役目である。招請講演の杉町圭蔵氏(九州中央病院)は,2003年から主に外科治療や癌に関するセカンド・オピニオン相談を無料で実施し,これまでに1400人もの患者の相談に乗ってきた。
氏によると,患者は「主治医の説明が難解」などの問題のほかにも,「主治医が忙しそうで,聞くのが申し訳ない」「主治医を信じているが,念のために別の専門家の意見を聞きたい」など,複雑な心境の中で不安を抱えているという。
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