医学界新聞

寄稿

2008.11.17

【寄稿】

英国ナチュラルバース最前線
第28回ICMとOxford Brookes大学“助産学教育・院内助産院”

内藤 直子(香川大学医学部看護学科教授/東京大学医学部客員研究員)


第28回ICM英国グラスゴ-の力強い助産師たち

 美しい青空の英国晴れに恵まれるなか,3年ごと開催の「第28回ICM(国際助産師連盟)グラスゴー大会 助産:女性,そして新生児のために世界規模での取り組みを」に,参加しました。第28回ICMのDavis大会長は,ICMシンボルカラーのタータンをまとって登壇し,助産師使命を力強くアピールされました。来賓の英国Anne王女やヨルダンMuna王妃,英国Brown前首相Sarah夫人らは「女性は信念に基づいて行動し,公的機関にも働きかけること。助産師は声を出し,仕事に自信を持つこと」など,期待を述べられました。

 日本の演題は約100題で,ポスター発表が圧倒的多数でした。「語学の壁」がありながらも,私たちは日本助産師会ブースで求めた「ご安産」と書かれたうちわをポスター会場に来られた助産師に配り,楽しく交流できました。また,私たちは向かいの松崎政代先生(東京大学大学院)のポスターの周りの人だかりに感心していました(写真)。

 英国の自然出産研究会ブースでは,木製から軽量で消毒可能なアルミ製へ改良されていったトラウベの変遷が展示されていました。さらに,ドイツのブースでも同様の展示があり,全世界が一丸となって築き上げてきた助産の歴史と一体感を垣間見る思いでした。

温故知新 英国助産師の技

 見学ツアーでは,日本助産師界のリーダーである平澤恵美子先生(日本赤十字看護大学)や多くの仲間と助産施設や院内助産院を見学しました。

 ロンドン市内St. Mary's病院では,院内助産院の分娩室に驚きました。なんと,日本の産小屋の「産み綱」のような幅広帯の強く柔らかい布が,天井から下がっているではありませんか。それでハンモックのように身体を揺らし,バランスボールで産痛を緩和します。

 また,水中分娩タブの75%水位で38度のお湯の中で身体を適時暖め,自然出産を導くそうです。水中分娩を禁止している施設もありますが,産婦の選択に任せるそうです。分娩台は中央に置かず,できるだけロッキングチェアを勧め,ベッドは分娩後に使うよう工夫され,今後は分娩台をなくし,スポンジマットの上でお産を介助するとのことです。もちろん,木壁を引くと救急時の機械類も収納されており,日本の「産み綱」の改良型をも想像させ,「温故知新・産婆の技」は素晴らしいと感じました。ダイレクトエントリー助...

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