医学界新聞

2008.11.10

学会を超えて,消化器病を議論

第16回日本消化器関連学会週間開催


 第16回日本消化器関連学会週間(JDDW2008)が10月1-4日,小俣政男運営委員会委員長(東大大学院)のもと,グランドプリンスホテル新高輪(東京都品川区),他において開催された。JDDWは,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本肝臓学会,日本消化器がん検診学会,日本消化吸収学会の5学会で開催される。各学会の密な連携のもと最新のテーマが挙げられ,活発な議論が交わされた。本紙ではその一部を紹介する。


common diseaseとなった胃食道逆流症

 胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)は,罹患者自体が増加していることに加え,内視鏡検査等の進歩により,臨床において頻回に遭遇する疾患となっている。喘息や,慢性喉頭炎,非心臓性の胸痛等の症状を引き起こすこともわかってきており,呼吸器や循環器,耳鼻科など他科の医師にとっても無縁ではない疾患である。

 日本消化器病学会では,common diseaseの診療ガイドラインの作成を継続して行っており,GERDガイドラインの作成は2006年に開始された。2003年に示された『胃潰瘍の診療ガイドライン』に則り,膨大な文献を検索対象とし,誰が作成しても同じガイドラインになることをめざしたという。

 特別企画「消化器病学会ガイドライン最終報告――GERD(胃食道逆流症)」(司会=京大大学院・千葉勉氏,島根大・木下芳一氏,東北大病院・本郷道夫氏)では,策定にかかわった10名のパネリストがステートメント案を提示し,その妥当性についてパブリックコメントを求めた。

 ガイドラインの作成過程は以下の通り。まずClinical Questionを作成してキーワードを抽出し,文献の検索式を決定した後,1983-2007年に出された論文について,文献検索を行った。さらに,論文全体が検討に値する論文について構造化抄録を作成し,エビデンスの高い論文を採用。その後,68のステートメント案(疫学6,病態11,診断8,内科的治療12,外科治療7,胃切除術後食道炎8,食道外症状16)をまとめた上で,治療における推奨グレードの判定や,診断・治療におけるフローチャートを作成した。

 疫学研究については,そのほとんどが横断的研究であり,エビデンスレベルは高くないものの,欧米とは異なる疫学的特徴が提示された。

 病態については,GERDの食道粘膜障害の主な原因は胃酸の暴露であり,その原因は,食道裂孔ヘルニア,下部食道括約部の異常等が考えられていること,GERD患者のHelicobacter pylori感染率は世界の地域により大きく異なっており,日本を含めた東アジアでは,GERD患者以外に比べ低率であることなどが挙げられた。

 診断分野では,GERDの自覚症状の一つである“胸やけ症状”につい...

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