医学界新聞

2008.10.20

第12回日本看護管理学会開催
プロセスのイノベーションを導く評価を


 第12回日本看護管理学会が8月22-23日,菅田勝也会長(東大)のもと,東大本郷キャンパス(東京都文京区)にて開催された。今回のテーマは「評価」。簡潔な言葉ながら,看護管理には欠かせない大きな課題であり,さまざまな角度から熱い議論が交わされた。


 会長講演では,医療の場において,「評価」が果たす役割が論じられた。菅田氏は,今日の病院では,医療費の増大問題から生じる効率性の見直しや,患者にいかに充実した医療を提供できるかが病院の生存競争のカギになっており,看護師に求められる役割も拡大・変貌してきていると指摘。その上で,効率的かつ効果的な医療を提供するためには「プロセスのイノベーション」が必要であり,評価はこのニーズを満たすための手段として有効なものであるとした。

 続いて,わが国における看護評価研究の実践状況として,「がん患者と家族への症状管理スキルの教育」など教育の効果に対する評価を挙げた。また,看護学生や看護師個人ではなく,看護師の一定の集団(ユニット)に対する評価の方法が1999年から米国で盛んになるなどの動きも紹介した。

 評価研究の課題としては,適切な研究デザインの開発と選択・倫理的配慮のほか,看護評価にランダム化比較試験(RCT)を取り入れることなどを挙げた。さらに,「さまざまな職種の人が活躍する今日の臨床現場で,看護師の存在を示すためには,患者が看護師のケアに満足することが必要」とし,そのようなアウトカムの創出に向けた看護評価研究が発展していくことに期待を示した。

60年の節目を看護管理者はどうとらえるのか

 特別企画シンポジウム「わが国の看護管理の発展と展望――保健師助産師看護師法60年の節目にあたって」(座長=国際医療福祉大・中西睦子氏)では,まず草刈淳子氏(神奈川県立保健福祉大)が,戦後の看護管理の発展経緯を7期に分け,各時期の特徴を振り返り,意義を検証した。

 野村陽子氏(厚労省)は,保助看法施行と関連した今日の課題として,(1)業務規定,(2)国家試験,(3)看護基礎教育の充実,(4)EPAによる外国人看護師の受け入れ,(5)行政処分を受けた看護職員に対する再教育を挙げ,今後は,看護職員の適切な配置,医療安全対策の推進,地域医療システムの構築が必要であると述べた。

 坂本すが氏(東京医療保健大)は,チーム医療において患者の最も近くにいる看護師は,最適な治療・ケアを提供するためのインターフェイスであるとし,この役割を“間隙手”と名づけ,重要性を主張するとともに,看護管理者の経営権限の拡大を訴えた。

 佐藤エキ子氏(聖路加国際病院)は,喫緊の課題となっている労働環境整備等は,患者アウトカムにおいても重要であり,病院経営ひいては国家という視点からとらえる時代にきていると述べた。

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