医学界新聞

インタビュー

2008.08.25



【special interview】

南 裕子氏(近大姫路大学学長)に聞く

「看護研究の基盤」を求めて博士課程の道へ
研究者を育てる環境づくりこそが私の使命なのです


“基盤”を求め,博士課程へ

――これまで南先生が長年,看護研究に取り組まれてきた途上で,さまざまなご経験をされてきたことと思います。そのなかで,先生の研究生活を変えた「転機」についてお話しください。

 1972年にイスラエルのヘブライ大学で公衆衛生学の修士号を取得し,疫学的方法を用いて社会的な健康問題を考える手法を身につけて帰国しました。その後7年間,母校でもある高知女子大学で教鞭を取っていたのですが,看護学を修めるうえでの基盤が自分の中にないようで,いつか学びが絞り出されて,私の中には何も残らなくなってしまうのではないかという不安を抱き続けていました。私の修士号は看護学で取得したものではなかったために自信が持てなかったのかもしれません。そこで,看護学における研究者として,さらなる理論や研究方法を身につけられれば,という漠然とした期待感で博士課程に進むことを決意しました。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校博士課程への入学後,思いがけず大きな成果が得られました。ここで看護学という学問,看護が果たす役割の捉え方を学び,留学前に求めていた「看護研究の基盤」を培っていただいたと思います。

 おかげで,それ以降は留学前に抱いていた不安に襲われることはなくなりました。それは博士課程で豊富な知識を手に入れたからだけではなく,新しい考え方をどんどん取り込んで学問を創造するための基盤を得たからだと感じています。

研究生活を振り返って

――40年にわたる研究生活を振り返って,いかがですか。

 私は博士課程で研究法も学びましたが,研究者としては大成しなかったかもしれません。むしろ私の使命は研究者を育てることにあったようです。

 アメリカから帰国して最初に取り組んだことは,聖路加看護大学でのソーシャルサポート研究会の立ち上げでした。井部俊子さん,太田喜久子さん,片田範子さん,上泉和子さん,山本あい子さんという,現在第一線で活躍中の顔ぶれがメンバーでした。研究に統計学を活用するコツを伝え,研究の面白さを一緒に楽しみ,時には愚痴をこぼし合ったりしながら(笑),かなりの数の論文を作成することができました。最初から意図していたわけでは...

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